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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
強豪クラブに移籍してすぐにケガ。ひと月離脱の息子の力になりたい問題
公開:2023年2月 8日
強豪クラブに移籍したばかりで1か月離脱のケガ。休んでいる間、周りに差をつけられるのではと不安になっている息子にどう声をかければいい? とのご相談をいただきました。
大人にしてみればたった1か月ですが、子どもにとって1か月も休むのは不安になるもの。みなさんはケガをしたお子さんをどのようにサポートしていますか。
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、お子さんに寄り添うために必要なマインドセット(心得)をお伝えします。
(文:島沢優子)
<<息子がキーパーをやりたくないと言うので移籍も考えてます問題
<サッカーママからのご相談>
いつも記事拝見させていただきまして、大変勉強になります。ありがとうございます。 相談お願いします。
3年生(9歳)の息子がいます。1年生からサッカーを始め、初めは練習に行くだけでしたが最近自主的に練習をしたり、ランニングしたりサッカーを上手くなりたいと自分で思うようになってきて、口出しはしないように親として応援だけしていました。
ただこのタイミングで足をケガしてしまい1か月弱の期間を運動を禁止と言われました。
本人は何も言いませんが、元気が無くなり落ち込んでいるようで見ていてとても辛いです。
将来サッカー選手になりたいと言っているので、親としてはしっかりとした栄養ある美味しい食事、睡眠時間の確保などできる限りサポートしていますがサッカーに関しては教えることも出来ず......。
ケガで1か月練習も出来なくなった息子にどう声を掛ければよいでしょうか?
去年年末から強豪クラブに移籍したばかりで周りに負けないように頑張っていましたが、本人は差をつけられるのでは無いかと不安になっているように思います。
<島沢さんからの回答>
ご相談いただき、ありがとうございます。
強豪クラブに移籍したばかりなのに一か月離脱するのは残念ですね。
このようなケースで親としてもっとも大事なことは、「過度に心配しない」ことです。息子さんはがっかりして落ち込んでいるかもしれませんが、彼のサッカーキャリアはまだ始まったばかりです。これからいくらでもサッカーは楽しめます。
まずはこんなけがや離脱は大したことではないのだと励ましてください。
そのようにして息子さんと寄り添うために必要なマインドセット(心得)を伝えさせてください。
■子ども以上に親が悲観してないか。1か月の離脱はいくらでも巻き返せる
ご相談文を拝見して、お母さんがかわいいわが子がサッカー選手になりたいと言って頑張っているのを応援したい気持ちは、よくわかります。が、まだ9歳です。サッカー選手しか道がないような育て方はよくありません。
私は幾人ものプロアスリートのお母さんやお父さんにお会いしましたが、大成した選手の親御さんほどわが子の小学生時代を例えばこう振り返ります。
「小学生のときは楽しんでやってくれればいいと思っていた」
「まさかこんなことになるとは思わなかった」
「サッカーのことはわからないので、ほぼほぼタッチしていません。いつの間にかプロになっていた、という感じ」
皆さんそろって放任主義の子育てをされていました。
一方、お母さんは息子さんのサッカーに少々入れ込み過ぎているなと感じました。冒頭に書いたように、これからずっとサッカーを続けてプロになり30歳まで続けたとしてもまだ20年以上あります。
プロにならず高校生くらいまでやったとしても10年近くあります。強豪クラブに移籍してきたばかりとはいえ、ひと月サッカーができなかったことが理由で6年生まで試合に出られなくなる、とは考えられません。いくらでも巻き返せます。
と、私が書いたようなことを、できればお母さん自身がご自分で考えて伝えられるといいかと思います。ところが、お母さんは息子さん以上にショックを受けてしまっている状態のようです。
■子どもがつらいとき親も一緒に落ち込むことは、のちの人間形成に影響が出ることも
この連載で幾度となくお伝えしたように、親は子どもの気持ちに「つらいねえ」「悲しいね」と共感してもいいけれど、「私もつらい」「私も悲しい」と同化してしまってはいけません。
親が同じように落ち込んだり心配したりすると、自分の一番近くにいて自分を一番理解しているお母さんからこんなに心配されている「ダメな僕(私)」というふうに、自己肯定感がダウンします。
自己肯定感は、子ども時代のエンジンです。何があっても「自分は大丈夫」「今の自分でOKなんだ」という自尊感情がすべての行動と成長の機動力になります。この自己肯定感をどうアップさせるかを考えましょう。
自分に何かうまくいかないことがあるとお母さんがすぐに落ち込むので、大事なお母さんを悲しませないようトライしません。うまくいかないことも隠しておかないと大変なので、いいところしか見せない。「自分は大丈夫」と思えないからです。そのような歪んだ人間形成につながります。
そこで、子どもに何かうまくいかないことがあったときは、そのピンチを「この子はどうやって(成長という)チャンスに変えるのかな?」と眺めるくらいの余裕をもつことをおすすめします。
このことを、私は小児科医で脳科学者の成田奈緒子先生から学びました。先ごろ『高学歴親という病』(講談社α新書)という本を一緒に作りました。親の溺愛が干渉や矛盾した子育てに変わり、そのことが子どもに良くない影響を及ぼすことや、そうならないための処方箋も紹介しています。
■今少し差をつけられても大したことではない。子どもの「サッカー」ではなく「人生」を見て
ふたつめは、自分のなかの子どもへの心配を信頼に変えること。私自身、お母さんと同じようにいつも息子を心配している親でした。
忘れ物がないかな。
学校でけんかしていないかな。
担任の先生に任せていて大丈夫だろうか。
漢字は覚えられているかな。
サッカーで嫌な思いはしていないだろうか。
そんなふうに、些末なことを心配していました。が、成田先生や様々な専門家や書物から自己肯定感の大切さを学んで、自分の子育ての軸が持てたように思えます。カラ元気でもいいから「うちの子は大丈夫」と思い込むことから始めてください。
「本人は差をつけられるのでは無いかと不安になっているように思います」とありますが、差がつくのではと不安なのは実はお母さんのほうかもしれません。差をつけられたところで大したことではありません。
「息子のサッカー」ではなく「息子の人生」を見つめましょう。
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