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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
力が弱いU-8年代にインステップキックを身につけさせる練習を教えて
公開:2020年3月27日 更新:2021年5月31日
U-8年代にインステップキックを上手く教える方法は? というご質問をいただきました。細身で力が弱い子が多いので強いボールを蹴ることができないというコーチ。
「強くボールを蹴るように」と指導される方もいらっしゃるかと思いますが、この質問に池上正さんは、「強く蹴れ」と言われて育つ弊害が見られると言います。サッカーの基本、インステップキックをきちんと身につけるための指導とは。
今回も、これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、練習メニューのアドバイスを送りますので参考にしてください。(取材・文:島沢優子)
<<特定の一人だけ活躍。技術差の大きいチームで全員を上手くするトレーニングはありますか?
<目次>
1.インステップキックを身につけさせる3つのポイント
2.GKがいないのに枠に飛ばせない理由 「強く蹴れ」と言われて育つ弊害
3.日本の選手がシュートが上手くないと言われる原因
<お父さんコーチからの質問>
こんにちは。
U-8年代へのインステップキックを上手く教える方法があれば教えてください。
小さく細身の子も多いのと、運動経験が少なく蹴り方のイメージができないのか、なかなか上手く蹴ることができないのと、力が弱いので強いボールが蹴られないのです。
サッカーの基本ですし、インステップキックを覚えて強いシュートが打てたら楽しいかなと思うのです。
他のキックも含めてですが、練習の中で自然に身に付くメニューなどを教えていただけませんでしょうか。
<池上さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
ご相談者様が指導されている8歳以下の子どもは、まだ力が弱いので強いボールを蹴ることはできません。逆に力いっぱい蹴ろうとするほど、力んでしまいます。余分な力が入ると足をうまくボールに当てられません。
逆に、ボールを正確にインステップに当てることができれば、力を入れなくてもボールは飛んでいきます。まずはそういう体験をさせなくてはいけません。
■インステップキックを身につけさせる3つのポイント
ひとつの方法として、手でもってパントキックをさせてみます。ゴールキーパーが手から離してボールを蹴る、あのかたちですね。その際、正確にインステップにボールを当てることを意識させます。最初は、真上に蹴る。足首を伸ばして蹴るようにする。足首を伸ばすことができていれば、真上に蹴ることから少しずつ角度を下げていくようにする。そのようにして足首が硬く固定されている状態でキックする練習をしていけば、力を入れなくてもボールが飛びます。
「あ、飛んだ。こうすればいいんだ」
そういう実感できるような体験をまずはしてもらいます。
指導する際は、3つの段階でみてあげてください。
1.足首が硬く固定されているか。
2.インステップにボールが当たって、蹴ったときしっかりした音がするか。
3.動きながらインステップで蹴ることができるか。
3.は、ドリブルしながら蹴る練習をします。右足で左にいる子にパスをさせます。角度としては20度くらい前方です。ななめにパスをするイメージですね。それが45度になり、90度になる。徐々に試合の中で使う技術になります。
最初の工夫として、スポンジの上にボールを置いてキックする。スポンジの上にボールを乗せると少し高くなるので蹴りやすくなります。地面を蹴らずに済みます。
そこでは正確に当てることを理解します。足首が固定されていてインステップに当たっているか。 そこまでのトレーニングは確実にできるまでやり続けるのではなく、大体感覚を掴んだら次の、前述したように動きながら、角度変えてパスする練習をします。それだけで大きく変わってきます。
これはできるだけ早い段階で、試合の中で使う技術の練習にすることが非常に大切だということです。尚且つ、できればここで左右の足を使うようにすればより早く両足が無理なく使えるようになるでしょう。(ドイツサッカー協会も推奨)
■GKがいないのに枠に飛ばせない。「強く蹴れ」と言われて育つ弊害
ところが、多くのコーチが、地面のボールを蹴らせた後は遠くに蹴る練習をさせます。遠くに蹴らせる必要はありません。特に低学年で浮いたボールを蹴るのは困難ですし、無理にやらせる必要はありません。
「強く蹴れ」というアドバイスもやめましょう。
ご相談の文章に「インステップキックを覚えて強いシュートが打てたら楽しい」と書かれていますが、強いシュートよりも「コースを狙えるようにする」ことをぜひ意識させてください。
例えば、シュートが入らなかったとき。
いいコースだったけど、スピードが足らなかったからキーパーに阻まれることは多々あります。そんなときに「もう少し強く蹴ったらよかったよね」というアドバイスはいいと思います。コーチも状況を見て、どんなアドバイスをするか判断してください。いつもいつも「強く蹴れ」ではないということです。
講習会でシュート練習をすると、ゴールキーパーがいないのに子どもたちは枠の中に飛ばせません。力いっぱい蹴るから入らないわけです。
そこで私は、ボールをちょこんと蹴ってコロコロと転がしてゴールに流し込みます。
「見て。コロコロでも入るよ。コーチは外さないよ」と話します。
「いま、キーパーいないでしょ?」と言うと、子どもたちは、ああ、そうか、というような顔になります。
私がキーパー役になり「次はコーチは動かないよ」と告げると、賢い子はゆっくり確実に、私をよけたコースに蹴ります。
「次は動くよ」と言うと、それなりのスピードで蹴り始める。ただし、しっかり前を見て蹴ります。ここでかけるのは「キーパーはどこにいるかな?」という声です。繰り返しになりますが、アドバイスを判断してください。判断することをせず「とにかくシュートは強く!」ではなく、正確に蹴ることを強調してください。
「強く蹴れ」と言われて育つ弊害は確実に見られます。
高校生年代の試合のウォーミングアップを見ていると、凄いスピードでシュートを打っています。したがって、試合になると枠内にさえ飛びません。小学生から「強く蹴れ」で育っているので、そうなってしまうのです。
さらに言えば、試合形式の練習でゴールにトライする場面が少なすぎます。プロセスに時間を費やしすぎると言うか、狙えるのに打たない。よって点を取れません。そんなことで思い出すのが、オシムさんが教えていたジェフ時代の巻誠一郎選手です。
巻選手は全体練習後に「シュート練習をさせてくれ」とオシムさんに頼みました。すると、オシムさんは「心配するな。俺の練習の中でやっていれば点は入る」と涼しい顔で言いました。
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