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ドリブルとパス、どちらを先に教えるべき? ジュニア年代の育成ではどちらを優先すべきか教えて

公開:2021年4月16日 更新:2021年6月23日

キーワード:ドリブルドリブルに特化パス個人技指導者止める、蹴る

ジュニア年代の指導ではドリブルとパス、どちらを先に教えたらいい? 保護者も子どもたちもドリブル軍団が勝利を収める場面を見て移籍したくなるようだ。

サッカーの最小局面は2対1という考えで指導しているけど、保護者や子どもたちのそんな姿を見ていると、指導が不安になる。ジュニア年代で優先的に伝えるのはドリブル? パス? というご相談。みなさんはどんな風に教えていますか?

これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、お父さんコーチの悩みにアドバイスを送ります。
(取材・文 島沢優子)

池上正さんの指導を動画で見る>>

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

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<お父さんコーチからの質問>

池上さん初めまして。

私は普段は専属で街クラブのジュニアチームで指導しています。指導年齢は未就学児から小6までです。

早速ですが質問です。ジュニアの育成年代に伝えて行くべき優先順位はパスですか? ドリブルですか?

ドリブルに特化したスクールや動画の配信が子ども達を夢中にさせているのを目の当たりにします。

またドリブルに特化したチームが有利にゲームを運び勝利する場面も多々見かけます。私としては「サッカー」を教えたいのでサッカーの最小局面は2対1という考えの元で指導しています。

ただ保護者や子ども達はドリブル軍団が勝利を収める場面を見ると移籍したくなるようです。

正直私も不安になる事があります。池上さんの育成に関する優先順位、勝手に前提を作って恐縮ですが、ドリブルかパスかの考えをもとにご教授いただけると幸いです。

 

 

<池上さんのアドバイス>

ご相談、ありがとうございます。

これまでも拙書でも何度か取り上げてきましたが、ドリブルかパスかという議論は、日本ではまだ見かける議論です。そのうえ数年前から「ドリブルデザイナー」といった肩書を名乗る方も現れました。

 

■ドリブルよりパスを教えることが難しいと思う指導者も少なくない

ドリブルやリフティングは、目に見えて成長がわかりやすい技術で、しかも「個人」に絞って技術の程度を評価できます。

一方の「パス」は、ひとりだけの技術ではありません。受け手がボールを受けやすいスペースに現れて初めて、出し手はパスを出せます。その点では、ドリブルが個人のスキルであるのに対し、パスはチーム(組織)のスキルと言えます。その点で、指導者のみなさんはパスを教えることを難しく感じられているようです。

 

■止める、蹴るの技術を取り出して教えるのは後でいい

例えばパスのスキルというと、まずは「止めて蹴る」から教え始めます。「ボールを止められなかったり、しっかり蹴れなければパスはできない」という考えの方は多いと思います。

ある指導者と話をしたときのことです。

私が「うまく動くことを教えれば、サッカーは楽しくなりますよ。(止める、蹴るの)技術を取り出して教えるのは後でいいのではないか」と話したら、「ボールを蹴れない子どもに動き方を教えても仕方がないだろう」とおっしゃいました。

「まさしくおっしゃる通りです。でも、キックの練習から入ると、このキックはいつ使うのかがわからないのでは? ゲームの中で、向かい合って蹴ったりするパスは使いませんよね。まず最初に、『ここに動いてボールをもらえばシュートを打てる』ということを理解できれば、子どもは『じゃあ、そのときにうまく蹴るためにキックの練習をしよう』となりませんか?」

そう話しました。キックやボールコントロールを何のためにやるのか、それがわかったほうが技術練習は断然楽しくなるはずです。

その指導者の方は「なるほど」と納得してくださいました。

 

■どちらが先ではない。パスもドリブルも一緒に教えないといけない

対するドリブルも、実は同じことが言えます。

「こういうときにドリブルできるとどう? 向こうの人にパスしやすくなるよね」とか「この密集を抜け出すためにはドリブルができるといいね」と、使いどころを一緒に探してあげてください。要するに、パスもドリブルも一緒に教えないといけません。どちらが先ということはないと私は考えます。

では、その先にあるものはなにか。

ご相談者様が書かれているように「2対1」がそのひとつです。さまざまな局面で、ドリブルをしたほうがいいか、パスしたほうがいいかを判断する力を養うためにも、2対1をしてもらいます。2対1から始める意味は「2人で協力すると簡単に点が取れるよね」ということを伝えるのが一番のポイントです。

例えば、味方のほうにちょっとボール向けると、前が空く可能性があります。そうすると、そこでパスもできるし、自分でドリブルしてシュートも打てます。どっちもできる。「そこで何を選びますか?」といったプロセスをたどることが大事です。指導者が「そこでパスを選べ」とか「ドリブルで勝負しろ」と命じるものではありません。

 

■ドリブルがうまくなった子にパスを教えるのは難しい

加えて、これは私の経験上わかっていることですが、ドリブルが上手くなった子に、「じゃあ、次はパスができるようになろう」とパスを教えるのは難しい。ひとりでドリブルで相手を抜けてしまう子は、なかなかパスを出そうとしません。

逆に、ドリブルもパスも一緒にトレーニングした子どもがゲームの中で自分の前にスペースがあるのにパスを探していたら「ここ、空いてるじゃん。ドリブルしてごらんよ」とアドバイスすると、その子は変わってきます。変化しやすいのです。

パスもドリブルも、選択肢が両方ある。もっといえば、どこにパスを出すか、どんなドリブルで場面を変えるかというようにそれぞれに選択肢があることが重要です。場面場面でどれだけたくさんの情報を持てるか。そして、その情報を瞬時に整理して選べるかがいい選手の条件です。

この認知、判断の次に「行動」がきます。正確に出てきたパスをコントロールし、次にパスやドリブルを選べるか。それができるプレーヤーになるためのベースをつくるのが、私たち育成年代を教える指導者の大きな仕事なのです。

 

■サッカーに必要な認知、判断力は「大人になったら理解できる」ものではない

したがって、情報を入れるトレーニングを早くからやったほうがいい。対面パスやジグザグドリブルのようなクローズドスキルだけでは、子どもは考えなくて済みます。日本のジュニアは足元の技術が素晴らしいと言われますが、それだけをやってしまうと頭で考える力がついてきません。近年、この認知能力は、世界のサッカーが見られるようになったおかげで推進されているかもしれません。

個の力を育てないといけないのでは」という意見があります。

おっしゃる通り欧州でも「個の力が重要」と言われています。抜きんでた個の技術は、メッシなどスーパーな選手がひとつのお手本でしょう。ところが、欧州の指導者は、すべての子どもたちをメッシになるように育てなきゃいけないとは思っていません。対する日本人はことさら「個の力は大切だ。メッシのような選手を育てなくては」と思ってしまうのかもしれません。

ディフェンダー、ミッドフィルダー、フォワードと、ポジションの違いもありますが、共通して持たなくてはいけないのはサッカーをどう認知して判断するかという力です。このベースがあっての話が「個の力」の追求になるのですが、そこが抜けていないでしょうか。

この能力は「大人になったら理解できる」というものでもありません。小さいときから、何を選びますか? 何を考えますか? と、自分で考えて認知し行動する習慣をつけておく必要があります。

無論、2対1の局面でもドリブルしたほうがいい場合もあります。でも、そこは「君が選べばいいんだよ」と伝える。そんな育て方をしてほしいと思います。

池上正さんの指導を動画で見る>>

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コーチからの【チーム指導の悩み】に池上正さんがお答えします(例:年代がバラバラなチームの練習メニューなど)※記事になります
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文:島沢優子

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