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自主練もドリブル塾もないスペインで「上手い選手」が育つワケ
スペインでは小1でも団子サッカーにならない理由とは⁉ スペインと日本の育成環境の違い
公開:2024年9月 9日 更新:2024年9月20日
EURO2024で見事12年ぶりの優勝を果たしたスペイン代表。大会前は優勝候補ではなかったにも関わらず、イタリア、ドイツ、フランス、イングランドと名だたる強豪国を打ち倒し、優勝に相応しいパフォーマンスを見せ続けました。
決して選手層で圧倒していたわけではないスペイン代表は、大会最年少出場であるラミン・ヤマル選手をはじめとした、若い選手の活躍が特徴的でした。開催当時16歳だった青年が大会随一の活躍を見せたのは、スペインの育成力の高さがうかがえたといえるでしょう。
長年ラ・リーガの解説を務め、自身でスペインの育成年の指揮をしたこともある小澤一郎さんは著書『自主練もドリブル塾もないスペインで「上手い選手」が育つワケ』で、スペインの育成について語っています。
第二回となる本記事では実際のスペインの小学生年代での練習の違いを抜粋してお届けします。
<<第一回:幼少期の指導が日本と異なる⁉ スペインには自主練もドリブル塾もないのに「上手い選手」が育つ理由
(写真提供:小澤一郎)
■「団子サッカー」にならない理由とは
では、スペインの育成年代が具体的にどのような練習をしているのかを見ていきます。日本で「子どもたちのサッカー」と聞くと"団子サッカー"を思い浮かべる人が多いでしょう。
戦術もシステムもなく、ボール目掛けて敵味方の子供たちが一斉に群がり、お団子のような状態になってしまうサッカーです。ボールが団子の外に飛び出ても、またボールに向かって子どもたちが集まっていくので、そこには戦術やシステムといった概念はありません。
もちろんスペインでも、サッカーを始めたばかりの子どもはボールに群がって「団子サッカー」になりがちです。ただ、その団子に指導者がきちんと介入し、「君はこのポジションだから、ここの場面ではボールに寄らずにこういうポジションを取りなさい」といったことを小さな子どもにも伝えます。
(写真は少年サッカーのイメージ)
私がスペイン在住時代に驚いたのは、サッカーをはじめたばかりの低学年の試合でも、指導者が審判とは別にピッチ内に入り、子どもたちが団子サッカーにならないよう介入してポジションを取らせていた光景です。どれだけ小さな子どもでも、ポジションを与え、必要な動きを教えれば、団子サッカーにはなりません。
サッカーは戦術的なスポーツのため、選手を適切に配置できれば、効果的なパス回しもできるようになりますし、効果的な守備も可能になります。相手チームのシステムや戦術との兼ね合いで、知的な駆け引きも生まれてきます。スペインではそうやって、小学校低学年の頃から「普通のサッカー」に少しずつ触れていくのです。
■小学1年生でも「ゴールキックからの組み立て」を練習する
2022年9月に家族でスペイン旅行に訪れた際、私は2人の息子を連れていき、街クラブの練習に参加させました。当時は上の子が小3で、下の子が幼稚園の年長。その年代でも、日本の同年代との練習は全く内容が違いました。
幼稚園の年長の息子が入った小学1年生のチームの練習は、非常に実践的なものでした。その日は練習がはじまると、コーチは「週末の試合ではゴールキックからのボールの組み立てが上手くできなかったから、今日はそこから練習してみよう」と話し、ゴールキックからのパス回しの練習をはじめました。
小学1年生でも年間を通じたリーグ戦があるスペインでは、このように「試合で上手くできなかったこと」をテーマに練習することが多いです。練習と試合が分離されずに、試合で分かった課題に基づいて練習が行われ、練習で行われたことが試合で生かされているのです。
その日は、ゴールキックのときの選手の立ち位置なども、細かく指導をしていました。
なおスペインの小学1年生の年代のサッカーは基本的に7人制ですが、バレンシア州は特殊で日本と同じ8人制です。
幼稚園生や小学校低学年では5人、6人と更に少人数にしている地域もあり、子どもの年齢やレベルに応じた人数調整こそ「プレーヤーズ・ファースト」だと感じます。
1チームの人数は大人のサッカーとは違いますが、子どもたちは大人と同じような練習をしています。私が見たのは小学1年生のチームの練習でしたが、おそらく幼稚園生でも同じような練習をしているでしょう。
もちろんこの年齢だと、指導者の指示通りに動けない子もいますが、そうした子どもたちにもしっかり指導者は向き合います。一緒に見学していた妻は「小さな子がこんな戦術的な練習をするの!?」と驚いていましたが、スペインでは小学校低学年でも「試合で上手くいかなかったことを練習する」のが日常です。
練習の目的は、あくまで「試合で上手くプレーすること」にあるからです。これは考えれば非常に当たり前のことですが、日本の小学生は、一部の指導環境が整ったチームを除き、こうした練習をほとんど行いません。
私の下の子は幼稚園の年中から地元の少年団に入りましたが、小学校1年生までの3年間でゴールキックやフリーキック、スローインなど、試合で必ず起きるシチュエーションの練習をしたことがありませんでした。妻はそういった練習を日本で見ていたので、あまりのスペインとの違いに驚いたのでしょう。
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