3月26日に渋谷にて、ミゲル・ロドリゴ氏と池上正氏によるスペシャルイベントが二部構成で開催されました。第一部では、ミゲル氏がジュニア年代の選手たちをトレーニングし、池上氏も参加者と一緒にそれを見学。第二部では、全国50万人以上の子どもを指導してきた池上氏ならではの目線でミゲル氏に質問を投げかけ、「ジュニア年代のトレー二ングで意識していること」について紐解いていきました。(文●木之下潤)
■各練習の中に存在する「遊び」要素の意味とは?
第一部のトレーニングに参加した子どもたちは、最初からハイテンションでした。みんなミゲルさんが行う一つひとつのトレーニングに夢中!その様子を観察していた池上さんは「2、3つの練習を見ただけで『なるほどな』と思った」と感想を述べてくれました。そこから第二部のトークイベントがスタート!
池上さんは一つ目の質問からミゲルさんがジュニア年代のトレーニングにおいて最も大切にしているポイントに切り込みました。
池上正「すべての練習がゲーム形式で勝ったり負けたり、ボールを取ったり取られたりがありました。そこにはどんな意味があるのですか?」
ミゲル「前半は遊びを軸とした練習でした。個々の技術の練習につながっています。例えば、『トロンコ&風車』ゲームですが、鬼にタッチされた選手は障害物としてトロンコや風車のアクションをするルールです。ボールを持って逃げる選手たちはその中で鬼に追いかけられることになり、空間さえもすべてをコントロールしなければいけません。いい緊張感の中に置かれます。
でも、日本でよく行われている、例えばコーンを置いたドリル・トレーニングはリアルの試合ではありえません。
練習はゲームを介して勝ったり負けたりがあるからこそ競争心が芽生え、モチベーションも上がるのです。子どもたちは負けたくないし、『ルールを守って、がんばろう』と集中力も高まります。きっと、ピッチの空間が楽しいものになっていたはずです。ウォーミングアップでジャンケンゲームをしたと思いますが、あれはドリブルの方向付けがテーマです。でも、足裏、インサイド、アウトサイドと足先のいろいろな部分を使っています。
また、ジャンケンに勝ったり負けたりした直後に切り替えが発生しています。同時に、脳もウォーミングアップをしているのです。多くの場合、意外と忘れがちではありませんか? パス、ドリブル、コントロール、1対1、ボールキープ、方向転換、リズムの切り替えなど、僕個人のテクニック練習ではドリル・トレーニングをしません。必ず遊びの要素を入れて、実践の中で起こりそうなシーンへとつなげています。勝ち負けの要素を取り入れることによって実践に近い状況を作ります。でも、勝ち負けには重点を置いていません。あくまで勝負はモチベーションを高めるために加えるのであって、勝ち負けそのものは重視していません」