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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

試合を嫌がる息子に自信を持たせるにはどうしたらいいの問題

公開:2019年7月31日 更新:2019年8月15日

キーワード:勝利優先勝利至上主義期待練習は好き自信がない自己肯定感親の気持ちに忖度試合が苦手試合に出たくない

練習は好きだけど、試合に出たがらない息子。週末に試合があるとわかったら、前日から「明日は気分が悪くて試合に行けないかも」と後ろ向きな発言が......。

自信がないとのことなのですが、どうやって自信をつけさせればいいの? というご相談をいただきました。 じつは意外といる「練習は好きだけど試合に出たくない」子どもたち。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、試合に出たくない子どもたちの3つの共通項と、親のサポートについてアドバイスを授けます。参考になさってください。(文:島沢優子)

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(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<走り切れなかった息子に「手の施しようがない」 選手を見限るコーチどうなの問題

 

<サッカーママからのご相談>

はじめまして。今四年生(10歳)になる息子が一人います。

三年生から何か習い事をさせなければと思いサッカーをさせて一年になります。

息子は練習は好きだけど試合が苦手のようです。

週末試合があると聞いたら、前日から「明日は気分が悪くて試合いけないかも」と言ってきました。

よくよく話を聞くと自信がないそうです。うちの息子の周りはもちろん上手い子もちろんいますがそれなりの子もいます。自分だけ下手で周囲に何か言われているという状況ではないのですが、自信を持たせるためにはどうしたらいいでしょうか?

 

<島沢さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

「試合がきらい」と嫌がる子は少なくありません。

サカイクで「池上正のコーチングゼミ」を連載されている池上コーチの最初の著書『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』を2006~07年にかけて制作したころ、すでに池上さんが「試合に出たくないっていう子がいるよ」と話されていました。

 

■実は意外といる「試合を嫌がる子」その共通項とは

そのことを意識して取材を始めると、「試合に出たくないっていう子どもはいますか?」と尋ねた少年サッカーチームのすべてに存在しました。

「うちにもいるよ。試合は出たくないからって週末の活動には参加しない。なんのためにサッカーをしているんだろうね?」
「毎年2、3年生に必ずいるかな。戦力にならない子ばかりだから、こっちはいいんだけど」

十数年前の指導者はそう答えました。

指導に暴力や暴力がまだ混在し、「プレヤーズファースト」「オープンマインド」などが日本のスポーツ界にまだ浸透していなかった時代のことです。

試合を嫌がる子どもとその親を取材すると、3つの共通項が見られました。

 

ひとつは、指導者が練習試合であろうが公式戦であろうがすべて勝つという姿勢であること。遠征に行って数試合やっても、出場時間は数分で終わる。

ふたつめは、勝利が優先なので、大人も、子どもも、ミスをなじる。よって、子どもによってはミスを恐れ萎縮している。

みっつめは、親御さんは「サッカーを楽しんでほしい」とは言うけれど、試合に出なかったり、うまくできない姿に満足していない。試合後に「どうして試合に出られないのか考えなさい」「自主練習が足りない」などと言ってしまう。

 

なかには「今日ゴールできなかったら、サッカーはやめさせるから」と約束させてしまう例もありました。その子も試合になると「おなかが痛い」と休みたがり、なんとか行かせても体調不良を訴えてずっとベンチで過ごしていました。

そのお母さんは「息子の姿が歯がゆくて、辞めさせるつもりはなかったけれど、奮起させたくてつい言ってしまった」と話していました。が、結局息子さんはしばらくして本当にやめてしまいました。辞めたのは1年後。4年生くらいだったと思います。

 

■子どもは親の期待を感じている。いま息子さんが試合のピッチに立てない理由

「次はスイミングをやる」とサッカーの代わりに次に何をやるかも宣言して辞めたのですが、結局スイミングには通わず、毎日がゲーム三昧に。そこで中学受験をすることになりました。

お母さんが提案して、息子さんが決意したようです。

しかも、少し実力よりも高いレベルの学校を受け失敗。結局公立中学へ。高校も自分の力よりも上を目指すと宣言し、大学も同じように上を目指しました。

「A高校に入る!」「S大学に行くから!」と宣言するたびにお母さんを喜ばせていましたが、いずれも模試の結果は程遠く、直前で出願先を変えたそうです。

一見して自分の思い通りにならない人生を歩んでいる息子さんですが、実はずっと自分の意思よりも自分に期待するお母さんの思いを忖度していたようです。クリアしなくても、目標を掲げることで一瞬は評価されるからです。

「すごい!頑張って!」と喜ばせることに必死になる。そのあとは努力しない。なぜならば「高い目標を掲げてもずっとうまくいかなかったから、どうせ無理」。そう言ったそうです。

そして、お母さんが話したことは、意外なものでした。
「(子育ての)最初にあったサッカーがすべてだったように思う。あそこで彼を追い詰めず楽しくサッカーできればこんなことにならなかった。でも、あの時代はどのチームも勝つことだけで、下手な子にやさしいチームなんてなかった」

サッカーを辞めた後、家でサッカーが話題になると、息子さんはたびたび言ったそうです。

「今日ゴールできなかったら、サッカーはやめさせるって、あのとき言ったよね。お母さんは鬼だと思った」と。

奮起させる、と、追い詰める、は、紙一重。そんなギャンブルのような手法を、子育てに使ってはいけません。

少なくとも、ご相談者様は息子さんから「自信がない」という言葉を引き出しています。

自信がないのは、おそらく指導者やチームメイト、お母さんたちの考える姿に自分が達していないと思い込んでいるからではないでしょうか。

お母さんは「自信をつけるにはどうしたらいいか」を私に尋ねています。自信は、自分を信じる力なので自己肯定感ですね。自分はありのままでいい。自分はチームにいてもいい人間。ピッチに立っていい人間。「自分は大丈夫だ」と思えるこころが大事です。

ところが、「もっと自信を持て」と、今の自分から変わることを求められている息子さんはそう思えない。よって、試合のピッチに立てません。

次ページ:ひとりで抱え込まないで。声掛けの工夫も息子さんのサポートになる

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文:島沢優子

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