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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
コーチの差別的な対応があってサッカーをやめてしまった問題
公開:2020年7月22日
所属したチームのコーチが上手い子とそうでない子をあからさまに差別するので、自信を失ってチームを退団したが、数か月たっても自信が回復しない。
サッカーが嫌いになったわけではなさそうだけど、今はほとんどボールも触らないし、こんなときはどうすればいい? 子どもに合うチームを探すか、他の道を探すべきか迷っている。というお母さんからご相談です。 みなさんならどうしますか?
今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとに3つのアドバイスを授けますので参考にしてください。
(文:島沢優子)
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<サッカーママからのご相談>
小四の息子がいます。運動神経は良い方ではありません。
一年から、スクールで遊び程度にサッカーをはじめ、昨年から本人の上手くなりたいという気持ちからチームに入りました。その際にスクールは退会しています。
しかしながら、自分から入りたいと言ったのにチームに入団して半年経っても自分から練習をしたりせず、親が言って練習するような状態でした。ですが、しばらくすると自分が成長している実感が出てきたのか、前向きに取り組む様になりました。
ようやくやる気を出してくれたと思っていたのですが、所属したチームのコーチが上手な子とそうでない子をあからさまに差別する対応をとることもあり、自信を失ってチームを辞める事となりました。
数か月たちますが未だに自信が回復しません。サッカー自体を嫌いになったわけではないようですが、今はスクールにも行っていないし、時々、本当に時々ボールを触るぐらいです。
こんな時は、子どもに合いそうなチームを見つけて続けさせるべきなのか、サッカーは辞めて他の道を一緒に探すのが良いのかとても迷っています。
なにかアドバイス頂けたら幸いです。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。
短いお便りだけなので、正確に把握できないかもしれません。そこを踏まえてお聴きください。
■選択肢を限定しているのでは?
ご相談のメールから、お母さんはいま、息子さんのことをあまり認める気分ではないのかな? という印象を受けました。
「自分から入りたいと言ったのにチームに入団して半年経っても自分から練習をしたりせず、親が言って練習するような状態でした」
「今はスクールにも行っていないし、時々、本当に時々ボールを触るぐらいです」
そのような言葉から推測するに、息子さんに対して「なんだかなあ」と残念に感じているのではありませんか? 間違っていたらすみません。
でも、誤解しないでくださいね。お母さんを責めているのではありません。お気持ち、非常にわかります。
もっと前向きにやってよ。
やる気出してよ。
シャキッとしてよ。
子どもに対して、そんなふうに思うこと、ありますよね。私にもよくありました。何かに付け、「もう、本当に不甲斐ない!」と思っていました。
お母さんがそんなふうに残念な気持ちでいるときに、お母さんだけの思惑で動くのは危険です。お母さん自身が「この状態を早く何とかしたい」と焦ってしまい、冷静に行動できないかもしれません。親が冷静に動けないときはほとんどの場合、子どもの意思や気持ちを尊重できていません。
すでにお母さんは「こんな時は、子どもに合いそうなチームを見つけて続けさせるべきなのか、サッカーは辞めて他の道を一緒に探すのが良いのか」と選択肢を限定して、焦っている様子がうかがえます。
では、どうしたらいいか。三つアドバイスさせてください。
■声に出していなくてもお母さんからの無言の圧力を感じているはず
ひとつめ。立ち止まってください。
お母さんの息子さんへのネガティブな気持ちを、まずは鎮めましょう。スクールにも行かず、自分でボールを蹴るくらいの息子さんが気になるようですが、「息子とサッカーにまつわること」をとにかく気にしない。見ない、聞かない。
そう決心して、なるべくサッカー以外のことで息子さんとつながってください。一緒に何か作って食べる。家で映画を見る。同じ本を読む。一緒にゲームをする。何でもいいです。
それも難しければ、一時的に息子さん以外のことで自分を忙しくしてください。首都圏などにお住まいならまだコロナの影響で動きづらい状態ですが、そのなかで自分の趣味や好きなことを見つけてください。子育て以外のことに熱中しましょう。
そんなふうにお母さんの視線が息子さんから離れることは、彼自身にとってもいい影響を及ぼすはずです。
サッカー、どうするの? もうやめるの? 続けないの?
もし声に出していなかったとしても、息子さんはお母さんからの無言の圧力を感じているはずです(本人に自覚がなかったとしても)。そこから解放されれば、彼自身にも余裕が生まれます。
いまは親子ともに精神的な余裕がない状態だと考えられます。すでにお伝えしましたが、そんなときはあまり新しいことを始めたり、決断をしないほうがいいと思います。
■自分で決めなさい、と言いながら親が誘導していないか
ふたつめ。これまでの子育てを少し見直してみましょう。
ご相談文に、「所属したチームのコーチが上手な子とそうでない子をあからさまに差別する対応をとることもあり、自信を失ってチームを辞めた」とありましたが、これは、息子さんが「差別だよ。こんなチームにはいたくない。とりあえずやめる」と強く主張し、自分から決心して退団したのでしょうか?
もし、お母さんが「もうやめたら?」と働きかけていたとしたら、少しばかり過干渉な部分がなかったか、考えてみてください。
この連載で何度か書きましたが、あれこれと世話を焼くことは、過度になると「転ばぬ先の杖」になってしまいます。大人が世話を焼くことは、子どもが自分で考えたり、決心して自分から動く機会を奪います。失敗もしないし、子どもも何も考えなくていいので楽ですが、そこに成長はありません。杖があると、足腰は鍛えられないのです。
そして、注意すべきは「自分で決めなさい」と言いながら、「こうしたらいいのに」「これがいいと思うけど」と誘導している場合です。
これは私自身もここに気づくのに時間がかかりました。主体的に動く人間になってほしいと思いながら、いつの間にかうまくいくよう誘導していました。ところが、親が「良かれと思って」動くと、あまりうまくいきません。
したがって、親は放置する勇気を持たなくてはいけません。私の子どもは二人ともすでに大学生です。今思えば、放置できてこそ、親になれるのかなという気がします。
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