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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

息子に意地悪する子に注意したらコーチに叱られた、わが子をいじめる子に親が問いただすのはダメなのか問題

公開:2023年7月12日 更新:2023年7月13日

キーワード:いじめベンチメンバー固定レギュラー指導者監督

レギュラーメンバー固定のチーム。6年生の今は出ることができているが、試合で周りの子どもたちが「あいつにパスを出すな」などと言う。

子どもが傷ついているのを見て、親の自分がその子たちに説明を求めたら後日監督から呼ばれ、叱られた。いじめのようなことが起きているのに、親がほかの子どもを注意したらいけないの? とのご相談。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見やご自身の体験をもとに、3つのアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

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(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<控えは基本的な動きも指導されず放置、スタメンと控えで指導に差がありツライ問題

 

<サッカーママからのご相談>

小6の息子はこれまでずっとベンチを温めていて、この度世代交代で選手として出る事が出来ております。

所属するチームは、

Aチーム:レギュラーメンバー+ベンチ数名
Bチーム:レギュラーメンバー

で構成されており、息子はAチームのベンチメンバーになっているので試合にも出れず、2年間サポートとして活動をしていました。

学年が上がってもAチーム、Bチームの交代もありませんでした。もちろん練習試合も試合もあるBチームの方が実力をつけて、Aチームのベンチメンバーは今でも試合から外される事もあります。

今回、監督の指示で左中心で攻めると指示がありました。そうすると、子ども達が「あいつ(息子)にパスを出すな」「(息子)を使うな」と試合中に言い、パスももらえずベンチに下げられる事になりました。

息子はこの行為に傷つき、親である私の方からそのような言動を繰り返すまわりのメンバーに「どういうつもりでその事を言ったのか説明して」と伝えました。

しかし、後日監督から呼ばれ、 親が他人の子どもを注意するのはあり得ないとお叱りを受けました。

私は監督の指示に反しているのではございません。チームでいじめのような行為が起きている事が続いている現状、子どもがそのように訴えてきても親が他人の子を注意したのはいけなかったのでしょうか?

 

 

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

お母さんの息子さんを思う気持ちが、痛いほど伝わってきます。ただし、私たち親が「これは愛情だ」と思うものが、実はそうでなかったりすることもあります。そこの乖離を考えながら、私の意見を読んでいただけたらと思います。

 

■ピッチ上の出来事に対して、指導者を乗り越えて親が割って入るのはマナー違反

私がお伝えしたいことは三つあります。

まずひとつめ。ピッチの上は「選手とコーチの世界である」ことを理解しましょう。

監督から「親が他人の子どもを注意するのはあり得ない」と注意されたことに対し「監督の指示に反しているのではない」と弁明されています。が、監督さんはサッカーのピッチ上で起きたことに対し、保護者が指導者を乗りこえるかたちで子どもたちに言葉を投げかけたことに不快感を示したように見えます。

サッカーの練習や試合といった指導の現場は、コーチと選手のものです。仮に一部の選手から不適切と思われる言動があったとしても、そこに直接保護者が割って入ってはいけません。ルール違反とまでは言いませんが、マナー違反ではあるかと思います。

例えば、小学校の学校公開日(参観日)で、授業中に他の児童が自分の子どもに対してからかったり、いじめに似た態度があったとして、そこで保護者が児童らに「なんでそんなことをするの?」と詰め寄ることはそうそうないかと思います。なぜならば、そこは「教室」という児童と担任教師の空間だからです。仮に参観日でなかったとしても、そこに保護者が口を挟むことはほとんどないと思います。

 

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■「試合に出たい」「こんなチームは嫌だ」と立ち上がるのは子ども自身、親が先回りするのは愛情ではない

二つめ。トラブルは子ども自身に解決させて、それを成長の糧にしましょう。

お母さんが思わず「どういうつもりなのか?」と息子さんのチームメイトに詰め寄りたくなる気持ちはわからなくもありません。そこに至るまでに、お母さん自身がこの監督のチームマネージメント(運営)に不快感を抱いていたのではないですか?

Aチームのベンチメンバーになっているので試合にも出られず、2年間もサポートとして活動をしていること。

学年が上がってもAチーム、Bチームの交代はなく、実戦経験を積めるBチーム(レギュラー)の子どもたちが力をつけたため、息子さんたちAチームのベンチメンバーは試合から外されること。

私から見ても、Aチームのサポートメンバーを排他的に扱っています。決して平等に実戦経験を積ませる環境ではない。つまり、試合に出られない息子さんにとって理不尽なサッカー環境と言えます。

しかしながら「嫌だ」「試合に出たい」「こんなチームは嫌だ」と立ち上がって監督に意見したり、環境を変えるよう動くのは息子さん自身です。お母さんではありません。試合で「あいつにパスを出すな」と言われ傷ついたのなら、その子たちに「嫌だった。やめてほしい」と主張できるのが一番良いはずです。

「子どもがそのように訴えてきても、親が他人の子を注意したのはいけなかったのでしょうか?」とありますが、やはり「注意すべきではなかった」というのが私の答えです。

息子さんの頭の上の蠅を、お母さんは一生追い払い続けますか? それは一見親の愛情に見えますが、実は子どもにとっては迷惑な行動です。子どもにとって本当に必要な教育は、自分の頭の上の蠅を自分で追い払うことのできる「力」をつけてもらうことです。

パスを出すなと言われるなんて、哀しくて辛い出来事ですが、息子さんが「パスを出すなと言う側」でなくて良かった。パスを出すなと軽い気持ちで言ってしまう子どものほうが、実は問題なのです。「言われて嫌だったのなら、君は絶対に他者の尊厳を傷つけてはいけない」そんなことを息子さんと話してください。 

 

次ページ:子どもの気持ちを聞いて、自分がどうすればいいか考える余白を与えよう

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文:島沢優子

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