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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
寝ても覚めてもサッカー。戦術を自分で考えるなど熱心だけど仲間に文句ばかり言うのでもう試合を見に行きたくありません問題
公開:2025年8月20日
寝ても覚めてもサッカー大好きな息子。好きなことに一生懸命なのは良いけど、仲間と連携がうまくいかないと文句ばかり言ってコーチに叱られっぱなし。
チームだけでは物足りないからスクールにも通いたいと言うけど、今のチームの中でも気持ちの面で成長できることに気付いてほしくて悩む......。というご相談をいただきました。
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの知見をもとにアドバイスを送ります。
(構成・文:島沢優子)
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(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)
<サッカーママからのご相談>
はじめまして。
わが子はサッカー少年団に小学2年生から入団し、現在5年生です。寝ても覚めてもサッカーが大好きで、サッカー選手やチームの情報、サッカーのゲーム、戦術を考える等、いつも頭の中はサッカーのことでいっぱいです。
好きなことに一生懸命で、没頭できる趣味があるのはとても良いことだと思っています。
ただ、私が最も気になるのが、自分のチームの試合となると、自分のプレイやチームメイトとの連携が上手くいかないことにイライラし、文句ばっかり言っていつもコーチに怒られっぱなしなことです。
できなくてもがむしゃらに走る、動く、という、俗に言う泥臭さのようなものが息子に欠けていると思うと、試合を見に行きたいのですが文句垂らしながらやっている息子をみていてなんとも言えない気持ちになり、なかなか見に行く足が遠のいておりまして。
少年団だけでは足りないからスクールにも通いたいといっておりますが、親としては技術的に成長したい気持ちも理解しますが、気持ちの面で自分で気づいて変われる事があることを学んで欲しいしと思っています。
その類の話は家でもよくするのですが、 私もどうしたらよいかよくわからなってしまい、この度はご相談させていただきました。
<島沢さんからの回答>
ご相談ありがとうございます。
自分の息子が仲間を言葉で攻撃している姿を見るのは、親としてもいづらい気持ちになりますね。相手の親御さんの気持ちを考えると気まずいことでしょう。
とはいえ、目に見える事象だけを参考にして「できなくてもがむしゃらに走る、動く、という、俗に言う泥臭さのようなものが息子に欠けている」と決めつけてしまうのはどうでしょうか。
■息子さんと周りの子でサッカーの理解度に差があるのかも
私はお母さんの相談文にあった「サッカー選手やチームの情報、サッカーのゲーム、戦術を考える等、いつも頭の中はサッカーのことでいっぱいです」の一文に注目しました。息子さんはサッカーの成り立ちをすでに把握し、それを遂行しようと一生懸命なのではないでしょうか。
10歳なので3~4年生。スペインやドイツなど欧州のサッカー先進国では6歳くらいでもパスを回しますが、日本の育成年代のその時期はボールをみんなで追いかける団子サッカーから、少しずつ広がってパスを回すなどして戦術を覚えていく時期です。つまり、サッカーの成り立ちを把握している子と、そうでない子の差がまだまだ大きいのです。
これが上級生になると差が縮まっていくのですが、この時期は個人差があるため、息子さんのようにすでに認知度が高まっている子どもは、まだそこが低いままの周りに対して「こうするんだよ」とか「そうじゃなくて」と焦燥感を覚えます。
■精神論ではなく、我が子の言い分や気持ちを聞いてあげて
当然ながら息子さんに会ってもいませんし、わずか500字の相談文から推測したものなので、私の考えが合っているかどうかはわかりません。
ただ、外から見たお母さんの主観で「泥臭さが欠けてる」とか「周りに指示するな」といったことは言わないほうがよいかと思います。単なる精神論で片づけてはいけません。
お母さん自身、恥ずかしい思いもするかもしれません。が、ここはぜひ「腹が立っちゃうのは、君にこうしたらいいのにっていうプランがあるからなのかな?」とか「怒ってしまう原因って何なのかな?」などと息子さんの言い分や気持ちも聞いてあげてください。
■コートの中の問題は親の問題ではない、泰然自若としていて
次に、「これは親である私が解決する問題ではない」と認識しなくてはいけません。いさかいはサッカーコートの中で起きているのだから、これはコーチと子どもたちの問題です。
チームで解決する問題なのですから、放っておけばいいのです。それでも「息子だけが悪者にされるのでは?」と心配になったり、ほかの保護者に対して気まずく感じるのなら、いったん見に行くのはやめましょう。
とにかく泰然自若としていれば良いのです。何度も起きるようならコーチも手当てをするはずです。それをしないのなら、しない理由があるかもしれません。とにかく任せることです。
■スクールに通いたいという希望は叶えてあげてほしい
その点から言うと、少年団だけでは足りないからスクールにも通いたいという息子さんの希望は叶えてあげてください。もしかしたら少年団では教えてもらえない戦術面をさらに深く、広く教えてもらえるかもしれません。
そのなかで、仲間たちにどう伝えればいいのかといった言語化するスキルを覚えてくることも期待できます。ここでも、任せることです。どうか息子さんの学びの意欲を摘み取らないでください。
■子どもへの期待が高すぎない? まだ10歳、仲間との衝突で得る学びも大きい年代
さらに言えば、「親としては技術的に成長したい気持ちも理解できますが、気持ちの面で自分で気づいて変われる事があることを学んで欲しい」の一文が気になります。
寄せる期待や希望が、多少高度な気がします。まだ10歳ですから、仲間に誤解を与えたり、いさかいを招くこともあるでしょう。しかしながら、そんな衝突で得る学びや成長もまた大きいはずです。
言い方とかタイミングなど細かいコミュニケーションスキルはこれから磨かれます。なにしろシュートを打たなければゴールが生まれないように、コミュニケートしなければスキルは向上しません。
■子ども自身が話すことで客観的になれたり問題が整理されることも
では、親は何をするか。
少年団の仲間に不満があるのなら、それに対し「そんなこと言っちゃダメ」などと否定せず、家で聞いてあげてください。ただただ、傾聴する。そして、文句を言われた子どもの気持ちをそこで淡々と代弁してあげてください。
「A君、まだちょっとわからなかったのかもね。そんな言い方をされたら、こころがシュンとして苦しくなったかもよ」などと言ってみてください。
決して「ああすればいい」「こうすればいい」と指示命令しないほうがいいでしょう。お母さんに話すことで、問題が整理されたり、客観的に考えられたりすることもあります。
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