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JFAグラスルーツ推進部部長が行く!あなたの街のサッカーチーム訪問
フットサルは年齢も性別も関係なく、とにかく楽しめるのが良いところ
公開:2016年12月26日 更新:2016年12月28日
まだ見ぬグラスルーツの原風景を求めて日本サッカー協会(JFA)、グラスルーツ推進部の松田薫二部長が全国を訪ね歩くこの連載。今回、松田部長が降り立ったのは、雪がちらつく山形県。訪ねたのは取材初のフットサルクラブ、特定非営利活動法人プチユナイテッドアスリートクラブです。フットサルを中心に地域の子どもたちと積極的にかかわり、いわゆる“子どもの貧困”や“不登校”“いじめ”などの社会問題に取り組むプチユナイテッドは、グラスルール推進・賛同パートナー制度誕生以前から、「ずっとEnjoy♫」、「みんなPlay!」、「だれでもJoin♪」を実践してきたクラブでした。
■地域の子どもたちに起きている問題に手弁当で取り組む
「昨日まで雪はなかったんですけどね」
米沢駅まで出迎えてくれたのは、荒木秀和監督。体育館につくまでの車内で早速取材が始まります。
「子どもたちのサポートという面ではかなりいろいろなことをされていると知って、ぜひこちらのクラブを取材したいなと思いました」
松田部長の言葉を受けて、荒木さんはクラブ発足のきっかけや現在の活動について語り出しました。
「今でも現役なんですが、自分がフットサルをプレーしていて、この地域に来た時にすでにあったチームのお手伝いをすることになったんです。そのうちに、地域の子どもたちのなかに、身体的、精神的、そして金銭的にサッカーやフットサルをするのが難しい子たちがいることに気が付きました。それから、クラブの組織改革などを経て、2007年からプチユナイテッドとして活動しています」
かねてから、地域の社会問題や子どもたちの身の回りの問題をサッカーやフットサル、“サッカーファミリー”がかかわることで何か協力できることがあるのではないか? と考えている松田部長は、荒木さんの活動に興味深そうに耳を傾けます。
「クラブとして単独でそういったことをするのは大変だったんじゃないですか?」
荒木さんは、「あそこにいるとご飯が食べられるとか、なんか知らないけど話を聞いてくれるとか、そんな感じでずっときましたからね。特別なことをしているわけではありませんよ」と笑います。
■大人の真剣な背中を見て子どもたちが成長する
プチユナイテッドはフットサルクラブとして小学生から社会人までのカテゴリでフットサルを行うクラブです。トップチームは社会人県リーグ2部に所属。荒木さんも現役プレイヤーとして“本気で上を目指す”競技志向な側面も持ちます。
「やるときは本当に真剣にやる。女子チームもあるんですけど、いろんな問題を抱える子も多かった未経験者集団のこのチームが、去年はリーグ戦で準優勝ですからね」
競技は厳しく、大人が率先して真剣な姿を見せる。子どもたちに一生懸命何かと向き合う場、安心して過ごせる居場所を提供するのがプチユナイテッドの役割だと荒木さんは言います。
「多いときは10人くらい家に来て、飯を食べに来ます。その中の何人かは寝泊りしたり、ウチから学校に行ったりしています」
この話を聞いた松田部長は「ご自身のお家でですか?」と驚きます。
「自宅にそんなに人がいたら、いろいろな面で負担がかかりますよね?ご家族はどんな反応ですか?」
そう問いかける松田部長に、荒木さんはそんなこと考えてもみなかったというように答えます。
「いやいや、むしろうちの妻のほうが『放っておけない』『うちに来なさい』という人なんですよ」
それでも、物理的、金銭的な負担は無視できません。昨年、子どもたちを継続的に受け入れ、地域に根差した活動を維持するために、プチユナイテッドアスリートクラブはNPO法人化に踏み切ったと言います。
「手弁当というか持ち出しでというのは誰にでもできることではありません。そういう活動をどう支援していくのか。地域の行政やJFAとの連携で、サポートを受けられるようにしていきたいです」
松田部長は、地域社会への貢献、子どもたちのサポートを組織や行政に先駆けて個人的に行っている荒木さんに敬意を表しつつ、こうしたケースにグラスルーツ推進部、JFAがどんなサポートができるのかについて考えます。
■組織や行政の助けよりも家族の力で実現
練習会場の地域の小学校には、未就学児から小・中・高校生、大人たちまで様々な年齢の選手たちが集まっていました。障がいのある子も受け入れ、みんなと一緒にプレーしています。練習が始まると、体育館全体に目を配り、スタッフや子供たちをフォローして回る女性の姿が目に留まります。この人が、荒木さんが話していた奥様ののぞみさんでした。時にやさしく、時に厳しく子どもたちに接する姿は、まさに“クラブの母親”。荒木さん夫妻がこのクラブに情熱を注いでいることが一目でわかりました。
クラブの中心にいるのは夫妻だけではありません。20歳の長女・法子さん、17歳でチームの主力を務める長男・秀平君、7歳の次女・乃々歩ちゃん。クラブの要所には荒木ファミリーの姿がありました。
「1年のうち360日をフットサルに費やすような“フットサルバカ”だった主人に巻き込まれたって言うんですかね? 私もフットサル? それ何? というところから、なぜか必死でルールを勉強することになって、3級審判をとって、年間100試合くらい笛を吹いて、自分でもプレーするようになっていましたからね」
晴れてのぞみさんもフットサル漬けの日々に。子どもたちも、休日でもほとんど家にいないお父さんと遊びたい一心でフットサルをするようになっていったと言います。
「父親と一緒にできるスポーツだからうれしかったんじゃないですか?」
のぞみさんの言葉通り、プチユナイテッドは荒木ファミリー全員が深くかかわって成り立っています。
「フットサルは年齢も性別も関係なく、とにかく楽しめるのが良いところだと思っているんですよ。だからみんなでやりたいし、無心でボールを追いかけている子どもたちはなんかいいんですよね」
家族も、そして地域も巻き込んだ張本人、荒木さんは、自らも息を切らせてボールを追いながらこんな風に話します。
「自分は当たり前のことをしているだけ。むしろ自分が一番楽しんでいる」
地域社会に貢献しながら、気負いや悲壮感を感じさせない荒木さんに松田部長も感心しきりでした。
次回は、プチユナイテッドの活動のもう一つの柱でもある子どもたちへの支援、子どもたちの居場所づくりを掲げる『アニマルハウス』の活動について、クラブの施設長を務める森谷亜衣さんのお話を中心にお届けします。
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