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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

勝負事なので勝つ事は非常に大事。育成年代で勝ちにこだわるのはダメですか?

公開:2018年3月 2日 更新:2019年3月18日

キーワード:コーチング全員出場勝利至上主義指導者池上正

勝ちにこだわるゆえに全員出場させることができないコーチ。能力差のある子どもたちを全員出場させながら勝利を目指すことが、子どもたちにとって良いことだと思いつつも実践できない、同じ葛藤を持つ指導者の方はぜひ参考にしてください。

これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんはどのようなアドバイスを授けたのでしょうか。(取材・文:島沢優子)

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※写真はサカイクキャンプの写真です。質問者及び質問内容とは関係ありません

<<U-10にパスの意識は必要か? 個性を生かした子どもの伸ばし方を教えて

<お父さんコーチからの質問>

育成年代で勝ちにこだわる事に対してどう思われますか?

私はこれまで、社会人サッカーでは地域リーグからJFL昇格を目指すチームのコーチを4年間、並行して中学校部活動の外部指導をさせてもらい、地区中体連では見事優勝したチームを指導していました。

今はどちらも辞めてサッカー「止めて蹴る」を初めて行うジュニア年代(U-11)のコーチをやっています

私は、ジュニア年代といえど、勝負事なので勝つ事は非常に大事な事だと思います。が、勝つ事にこだわりすぎて試合の状況によっては全員出してあけたいけど出せない自分が存在します。

能力差が激しいジュニア年代で全員出しながら勝てるチームを作っていかなければいけないのでしょうが、私にはまだその能力がありません。

何か良いアドバイスがあれば是非よろしくお願いします。

<池上さんのアドバイス>

ご相談、ありがとうございます。

さまざまな子どもが集まってくる町クラブでは、能力差があるのはどのクラブでも大前提になるでしょう。

相談者がおっしゃる通り、少年サッカーも試合をすれば当然勝ち負けがあるので「勝負事」にはなります。「地区中体連では見事優勝したチームを指導していました」と書かれているように、優勝を目指すことを考えておられるのでしょう。

もちろん、みんなで頑張っていろいろ努力した結果、優勝したのならそれでOKです。しかし、子どもたちにも、かかわる大人にも「勝つこと(結果)だけが大事じゃない」ということをわかってほしいと考えています。

勝ったかどうか、優勝したかどうかの結果ではなく、チーム全員が「勝ちたい気持ち」を同じ熱量で持てたかどうか。チーム全員が100%の力を出せたか、それに向かって努力できたか。

つまり「チーム全員」がそうなれるには、全員が試合に出なくては達成できません。

■子どもが「自分は望まれてない存在だ」と感じてしまう

「僕は下手だから、試合に出なくていいです」

大人が勝ちにこだわるなか、そんな子どもが出てきました。

それは、大人の「勝ちたい気持ち」を忖度しているからです。子どもは大人が考えるよりずっと物事を客観的に見ています。大人の態度や空気をきちんと読んで、望まれない自分の存在を消そうとします。

そうすると、何が起こるか。

いつも決まった子どもしか試合を経験できないので、結局は個々の能力差が開くばかりでチーム力の底上げができません。底上げができなければ、長い目で見れば強くなれないし、全員が成長できないのです。

「能力差が激しいジュニア年代で全員出しながら勝てるチームを作っていかなければいけない」とありますが、本当にそう考えるのなら「僕は下手だから、試合に出なくていい」と考えてしまう子どもをつくらないことです。目の前の試合は全員同じ時間出場させましょう。そうやってチーム力を整えていくことが大事です。

■大人の気持ちを忖度する子ども

「でも、子どもが勝ちたがるんですよ」
「優勝したがるのは子どもなんです」


大人の方からよくそんな声を聞きますが、子どもは本当に強い子だけが出て勝てばいい、と思っているでしょうか。もし子どもから万が一「勝ちたいからレギュラーだけでやりたい」などと言われたら、問いかけてください。

「それで、全員が楽しいかな?」

スポーツはみんなが楽しむものです。そのためにみんなで試合をします。スポーツには勝ち負けがあって、その勝ち負けを楽しむことを知ってほしい。負けたら、次は勝ちたい! と思って練習します。例えばチームの半分が試合に出ていなければ、その子どもたちはその思いを共有できません。

大人は、大人の気持ちを忖度してしまう子どもや、自分だけが試合に出られればいいと思っている子たちにスポーツの本質を伝えてあげなくてはいけません。子どもたちに、「みんなでやるんだ」という気持ちを伝え続けてほしいのです。サッカーが上手い子の役割がある。あまりできない子にも役割はあるのですから。

加えて、どんなスポーツでも、選手が100%の力を出せる試合と、出せない試合があります。もしくは、120%以上出して、自分たちより実力が上の相手に勝ったりします。つまり、スポーツは何が起こるかわからない。そこが醍醐味で、その醍醐味をみんなで味わうことが大切です。

次ページ:サッカー大国ドイツのジュニア育成は


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文:島沢優子

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