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- 中村憲剛の「KENGOアカデミー」
- 「後ろに目がついている?」中村憲剛がピッチで見ている世界とは
中村憲剛さんが読者の質問に答える「KENGOアカデミー」。後ろに目がついているのでは?と思えるほど、視野の広さを武器としていた憲剛さんに、どうすれば周りを見ることができるようになるのか質問をしました。
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【質問】
スルーパスを出すことが好きです。首を振る、周りを見て考えることが今の僕には一番必要だと思っています。
ゲームの最中に、できる時とできない時があって、パスがなかなか来ないと、忘れてボールをずっと見てしまうことが多いです。
憲剛さんは、周りが見えだした時は、急にできるようになったのか、それとも気が付けばそうなっていたのか。何か意識できる特別な方法があれば教えてほしいです。
【憲剛さんの回答】
質問ありがとう!
このような質問は、特にMFでプレーする選手たちから多く寄せられました。彼のようにトップ下の選手に対しては、プレッシャーも強くなるし、ボールを持ってから考える時間もありません。だからこそ、ボールを持っていない間に周りを見ておくことは重要です。
今回は「周りを見る」ということについて、僕なりの考えを話していきたいと思います。
■良い判断のためにはボールを持っていない時間が大事
僕のプレーをスタジアムで見たことがある人はわかると思いますが、試合中の僕はまるで「落ち着きがない子供」です(笑)。自分がボールを持っていないときは、いつもキョロキョロとしています。もちろん、試合に集中していないわけではなく、こうやってピッチ上の情報を集めているのです。
味方はどこにいるのか?相手はどこにいるのか?スペースはどこにあるのか?どこのマークが甘くなっているのか?
僕にとってはボールを持っているときよりも、ボールを持っていないときのほうが大事な時間と言えるかもしれません。こうやって、たくさん情報を持っておけば、ボールを持ったときに良い判断をすることができるからです。
周りを見るために、僕がやっていたのが「首を振る」という作業です。
僕にとって「首を振る」ことは、言ってみれば「呼吸をしている」のと同じようなものです。つまり、特別に意識してやっているわけではなく、当たり前のようにやっていることです。
ただ、僕自身、首を振るために特別にトレーニングをした記憶はありません。小学生時代の監督やコーチから首を振れと言われたこともない。当時はまだ首を振ることの重要性が浸透していなかったからだと思います。
では、僕はいつから、どうやって首を振って周りを見るようになったのか。正直言って、覚えていません……。気がついたら、首を振るようになっていたとしか言いようがないのです。
■首を振る意味を理解しよう
今は小学生のチームでも「首を振って、周りを見ろ!」と指導者に言われることが珍しくないようです。そもそも、どうして首を振ることが必要なのでしょうか。
人間の視野というのは基本的には180度です。よく、視野が広い選手に対して「後ろに目がついているようだ」と言われたりもしますが、どんなに優れた選手であっても自分の後ろを見ることはできません。自分の背後の状況を確認するには、首を振ることが必要になります。
みんなは「首を振る」ことは、サッカーで周りを見るための特別な技術だと思っていませんか?決してそうではありません。みんな、日常生活で普通にやっているはずです。
例えば、交差点の横断歩道を渡るとき。みんなは正面だけを見て歩きますか? 交差点のカーブを曲がってくる車は来ていないか、自転車がスピードを上げて走ってこないか、首を振って確認しているはずです。自分が危険だと思えば、誰に言われなくても自然と首を振る。
サッカーでも同じことが言えます。味方からパスをもらうとき、首を振らなければ背後から来ている相手に気がつかず、ボールを奪われてしまうかもしれない。ボールを奪われるのがイヤだったら、自然と首を振るようになるはずです。僕が誰にいわれなくても首を振るようになったのも、ボールを奪われたくないからという気持ちがあったからだと思います。
周りを見るために、首を振らなきゃいけないと思う必要はありません。自分がどんなプレーをしたいのか、何をされたくないのかを考えていけば、自然とそれに合わせた行動をとるはずです。
■中村憲剛の視野はどうなっている?
よく、「試合中にどんな視野でプレーしているのですか?」と質問されることがあります。これに答えるのは本当に難しい。そこでKENGOアカデミーのDVDでは、小型カメラをセットしたヘッドギアをつけて、僕が実際にプレーしているときの目線を見てもらっています。
DVDを見てもらった人ならわかると思うけど、首を振っている時間は本当に一瞬です。首を振っている間は、自分の背後の状況を確認できるけど、ボールを見ることはできません。だから、ずっと見ているのではなく、短い時間で、どれだけ正しい情報を得られるかが重要になってきます。
▼憲剛さんの視野を映像で見てみよう
自分がパスを受ける前に首を振るとき、しっかり見ておきたいのが近くにいる相手の「位置」と「距離」と「勢い」です。どこからボールを奪いに来ているのか、どのぐらい離れているのか、どのぐらいのスピードで動いているのか。言葉にするのが難しいけど……「見る」というよりは「感じる」といったほうがいいかもしれない。
■ボールに触らずに試合を動かす楽しさを知ろう
相手が速く動いているときは、ボールを足元に止めると危ないから、ファーストタッチでボールを相手のいないほうに運んでかわす。逆に、相手がゆっくりと動いているときは、ボールをコントロールして前を向く。
タイミングも重要です。基本的には、味方がボールを持っているときや、パスを出した後など、ボールの軌道が変化しないタイミングで首を振るようにします。
良くないのは、味方がこちらにパスを出そうとしているタイミングで首を振ること。ボールを蹴る瞬間を見逃してしまうと、パスの軌道やスピードに気付くのが遅れて、ミスにつながります。
それから、自分がボールをもらえそうなときだけじゃなくて、ボールを受けられそうにないときでも周りを見ることが重要です。自分とボールの関係だけじゃなく、客観的な視点で自分を見ることで、どこに動けば良いのかがわかってきます。
例え自分がボールに絡めなかったとしても、ポジショニングによって相手を引き付けて、間接的にゴールを演出することもできます。質問してくれた彼は「スルーパスを出すことが大好き」ということだけど、ボールに触らずに試合を動かす楽しさにも、ぜひ気付いてもらえたらなと思います。
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中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ。東京都小平市出身。小学生時代に府ロクサッカークラブでサッカーを始め、都立久留米高校(現・東京都立東久留米総合高校)、中央大学を経て03年に川崎フロンターレ加入。06年10月、日本代表デビュー。国際Aマッチ68試合出場6得点(2020年7月現在)。05年から19年までJリーグ優秀選手賞を15回連続受賞。Jリーグベストイレブン8回選出。16年に史上最年長で受賞したJリーグMVPはギネス世界記録に認定されている。
構成:北健一郎 協力:ケンプランニング
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