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「子どもを伸ばす親は、これをする」高妻教授の保護者メンタル強化論
試合に負けた日。子どもを"どうほめるか?"が、成長の分かれ道。
公開:2012年7月23日 更新:2020年2月17日
ジュニア選手育成において、保護者と子どもの接し方は軽視されていた部分。しかし子どもたちと一緒にいる時間が長い保護者と、コーチや選手(子ども)とのチームワークはとても重要だと、高妻容一先生は言います。「子どもがスポーツ選手として成長する時、良くも悪くも保護者の影響は大きいのです。しかし保護者がコーチや子どもにどう接するか、スポーツ科学をもとにした、的確な情報提供は少なかったと思います」。高妻先生はスポーツ心理学をもとにメンタル面を学問的・科学的に強化する『メンタルトレーニング』の第一人者。選手を伸ばす効果的な言葉のかけ方、接し方といった視点から、子どもをさらに成長させる保護者の言葉や態度をアドバイスしていただきます。
■試合に負けた時、心理学的に正しい接し方は?
「あれじゃ駄目だ」「もっと集中して」......保護者が子どもを育てたい気持ちから出た言葉や接し方が、逆に子どものやる気をそぎ、伸びる芽を摘み取っているかもしれません。こんなケースに心当たりはないでしょうか?
【子どもとのこんな会話に要注意】
せっかくのチャンスにシュートを外すなど、本人にもミスが目立って負けた試合。ふがいなさを感じ、帰宅した子どもに何か言いたい保護者も多いと思います。例えば「駄目じゃないか、ちゃんと得点して結果を出しなさい」「何があっても、試合に勝つことが大事なんだよ」「あんなに下手なら、もう一度最初から練習しようか」......。
「どれもよくある会話で、厳しいけど、子どもを励ましているからいいだろうと考える方もいるでしょう。しかし一番の問題は『駄目じゃないか』『これができていない』と、ネガティブな話題ばかりということ。ミスをしたり、試合に負けたりして、本人も反省して帰って来たのに、お父さんやお母さんから、どうして、なぜ、とネガティブに追求されると、お子さんは心の居場所がなくなってしまいます」。
負けたけど、この時のプレーはよかったね。チームとしても力はついているから、次はもっと頑張れる。そんなプラス思考、ポジティブな会話を中心に、今後について話してほしいと高妻先生は言います。
■結果を重視すると、選手として成長しない?
「またこの会話では、得点がとれること、試合に勝つことなど、"結果"だけで子どもを評価していますよね。ここも注意してほしい点です。試合で勝ったり負けたり、プレーが成功したり失敗したり。そうした経験を繰り返す中で学び、子どもたちは成長するんです。結果にこだわることはプレッシャーを与え、失敗から学ぶことを妨げるようになります。"結果"より、認めてほしいのは本人の"努力"なんです」。
ふだんの練習を生かして、ちゃんとパスができた。練習のおかげで、落ち着いて周囲が見えていた。こんなふうにポジティブな努力を評価すると、「ほめられた→うれしい→もっと努力しよう」といった、本人の成長を促すサイクルにもつながっていくのです。試合に負けた日に"ほめる"、その"ほめ方"に大事なカギがありそうです。
「試合の勝敗、プレーの良い悪いで気持ちが揺れる選手は、実は大成しないと私は考えています。一流の選手になるほど、評価は自分の努力に求め、そうした結果で揺れることはありません。『自分はこれだけ努力したから、この試合は大丈夫』と考え、試合で先制されても、ガタガタにならずプレーできるでしょう。万一、試合に負けた時も『今日の負けは相手の努力が勝っていたから。もっと努力しよう』と、次に向けた立ち直りができるはずです」。
こんなふうに心がブレない選手を育てるには、保護者がふだんから「これができたから良い。できないと駄目」という評価でなく、「この努力があるから、結果が出せた」と過程を評価する視点を持ち、実践することです。もちろんすぐ100%できる訳はなく、保護者として心のトレーニングが必要な部分といえます。まずは試合当日など節目になる時に、心掛けてはどうでしょうか。
「ここが駄目だから直せと欠点修正から入る。試合の勝敗など結果だけで評価する。スポーツ心理学を無視した指導が多いのも事実です。しかし現実には、努力をほめるご家庭のお子さんは大きく成長しています。そういったご家庭を見ていると、伸びる子がだいたいわかってくるんです」。
「子どもを伸ばす親は、子どもにこう接している」
高妻容一(こうづまよういち)//
1955年生まれ。東海大学体育学部教授。国際メンタルトレーニング学会、国際応用スポーツ心理学会など多数の学会に所属。1994年にはスポーツ心理学を背景としたメンタルトレーニングの組織「メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会」を設立し、日本でのメンタルトレーニングの正しい理解と情報交換を目的に活動を続けている。
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取材・文/山辺孝能 写真/サカイク編集部
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