テクニック
サッカーとフットサルの『違い』とは? 人数、プレースタイルなど違いを解説
公開:2011年11月 5日 更新:2024年6月19日
「バーモントカップ・全日本少年フットサル大会」などを目指してフットサルのトレーニングに励んでいる皆さんも多いのではないでしょうか。
でも皆さん、ここで素朴な疑問が出てきませんか?「サッカーとフットサルってどこが違うんだろう??」ってこと。
中でも「フットサルとサッカーのプレースタイルはどう違うのか?」といった技術的な部分。すなわち、私たちがフットサルをプレーし、さらにサッカーに生かす方法については、お父さん、お母さんのみならず指導者の皆さんも、なかなか明快に答えることは難しい質問ではないでしょうか。
そこで「サカイク」ではその疑問に答えるべく、「大西貴の親子でサッカーを楽しもう!」でもおなじみのサッカー解説者・大西貴さんに実際にプレーしてもらいながらサッカーとフットサルの「違い」をご紹介。さらに大西さん秘伝の仲間に差をつけるテクニックも伝授しちゃいます!
サッカーは11人(少年は8人)ですが、フットサルは5人、サッカーはスローインをするところ、フットサルはキックイン。他にもコートの大きさなど色々違うところはあります。
▼サッカーとフットサルの主な違いはこんなところです。
コートの大きさ
サッカー:縦110m×横64m
フットサル:縦40m×横20m(サッカーの1/9程度)
ゴールの大きさ
サッカー:高さ2.44m×幅7.32m
フットサル:高さ2m×幅3m
プレー人数
サッカー:11人(少年サッカーは8人)
フットサル:5人
ボールの大きさ
サッカー:5号球(直径22㎝)
フットサル:4号球(直径20.5㎝)
※大きさだけでなく、フットサルのボールの方が少し重く弾みにくい
ルール
・フットサルにはオフサイドがない
・バックパス禁止
・スローインでなくキックイン
など
コートが小さく人口密度が高い分、試合の展開が速いこと、1人ひとりにボールが回ってきやすいので全員がプレーに関わることができるのがフットサルの特徴です
■サッカーとフットサル、技術的な違いは?
――サッカーとフットサル。技術的な違いは、どんなところにあるのでしょうか?
大西「まずボールに対する立ち位置と、軸足の位置が違ってきます。サッカーはピッチも広いですし、シュートをする際にパワーが必要ですから、体からやや離れた前の位置にボールを置きます。
ただ、フットサルはコートも狭いですし、サッカーほどパワーを必要としません。そして相手DFはサッカー以上に時間を与えてくれません。ですから、ボールを置く位置、軸足の位置はより体に近い位置になってきます」
↑サッカーとフットサルのボールを扱う位置の違い
↑サッカーにおけるボールを扱う位置
↑フットサルにおけるボールを扱う位置
――となると、ボールを持ったときの考え方も変えないといけないですね?
大西「サッカーではスペースを使って緩急を使う場面もありますが、フットサルではスペースもほとんどないので、より『駆け引き』の要素が増えてきます。だからこそ、ボールをより自分がコントロールできる位置、つまりさっき言ったように『より体に近い位置でボールを扱うこと』が重要になってきます。
『距離感をつかんで、プレーを選択する』という考え方はサッカーもフットサルも同じですが、スペースや時間がない分、フットサルの方がより1対1の要素が増えてくる感じですね」
――でも、1対1が増えるのはサッカーのトレーニングにも活かせる要素ですよね?
大西「確かにフットサルをすると1対1の場面でのステップを覚えるようになりますね。それとフットサルはルール上、サッカーのように厳しくは体を寄せられませんから、体の使い方も覚えるようになる。じゃあ体の使い方で1つ、サッカーにも使えるボールキープのテクニックを教えましょう!」
――ぜひ、お願いします!
大西「普通、ボールをキープする場合は『ボールと相手の間に体を入れろ』と言われることが多いと思います。ただそれを実際にやると、相手が少し体をズラすと自分の入れた体の間を抜けられてしまうことがあるんですよ。
↑ボールキープの悪い例
そこでさらに相手のパワーを抑えるために何が必要になってくるかというと、相手の進路をふさいでしまうこと。ですから、相手の進路のスピードと方向を遮るようにステップワークを踏んで、すぐにそのまま体を入れると、ボールキープはできるようになりますよ。皆さんにはこのような間合いや距離感で勝負できるようになってほしいと思います」
↑ボールキープの良い例
■「力を抜くこと」をフットサルから学ぼう!
――ところで、昔はサッカーにおけるやり方をそのままフットサルに取り入れる指導者も多かったですが、バーモントカップを見ても今は完全にフットサルはフットサルになっていますね?
大西「そうですね。僕が現役時代に全日本フットサル選手権大会に出場したときは、まだサッカーの要素も多かったですけど、現在ではフットサルはフットサルでサッカーとは別のスポーツになってきていますね。そしてフットサルはサッカーと比べて局面が多いスポーツですから、いい立ち位置が保てればサッカーほどミスも多くはならないはずです」
――そうするとフットサルはサッカーより技術を学びやすい・・・
大西「ことになりますね。相手のバランスを崩したり、背中を取るような、ちょっとタイミングをズラすようなプレーは覚えやすいと思います。例えばサッカーだと相手をかわしてから次のプレーに移るところも、フットサルではもっと細かい動きでシュートまで持ってくることが必要になってきますから。
ただ、フットサルでこのような細かい技術を覚えるとノーステップでシュートを撃つようなサッカーの技術にもつながってきますから、そこはいいことだと思うんです。そして試合の中で駆け引きを覚えたり、技術を覚えることができるのがフットサルのよさですよね。
でも、ボールの止め方はサッカーもフットサルも変わらないんですよ。軸を置かないで、飛びながら止めるんです」
――「飛びながら止める」?そこのところ、もう少し詳しく教えてください。
大西「昔の体育の授業では『面を作ってしっかり止めろ』と教わった方が多いと思うんですが、実は軸を作って止めてしまうと、ボールの力を吸収できずにボールが弾んでしまいまし、当然ミスも多くなるわけです。止めて、一回引いてからでないと方向転換もできない。
↑高校サッカーでもフットサルに近いコートの広さで練習を行うことも
ということは軸を置かない方がボールの力は吸収されるし、次にどんなプレーもできるようになる。さらに飛びながらだと力は自然に抜けるから、さらにボールを扱いやすくなるわけです。浮きながらだと方向転換とかもスムーズにできるようになります。
その意味ではフットサルはサッカーよりボールがやや重いですから、ボールをより止めやすい。『力を抜くこと』をフットサルから学べば、サッカーにも活きてくると思いますよ」
――確かに!これは目からウロコなテクニックですね。
大西「外国の選手も速いボールを簡単にトラップしていますよね?その理由がトラップの瞬間、力が抜けているからなんですよ。常にリラックスした状態から動けるようになっているから、色々なプレーができるんです」
――さらにフットサルだと、その技術が磨きやすいというわけですね?
大西「フットサルはそんな細かいプレーがいっそう見えてくるスポーツですからね。さらに、フットサルではスモールフィールドでの判断の速さが求められるわけですから、そこで見て判断することができるようになれば、サッカーにおける判断の速さに必ずつながるはずです。
これはサッカー、フットサル共通ですが、見て色々な選択肢を持つことが『判断する』ということ。最初は難しいかもしれませんが、慣れればきっとサッカーにも活きるはずです。皆さんもフットサルでステップや判断のしかたを覚えて、サッカーもうまくなってくださいね!」
協力:愛媛県立松山北高等学校サッカー部
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大西 貴(おおにし・たかし)//
1971年・愛媛県生まれ。南宇和高では主将として1989年度の第68回全国高校サッカー大会制覇。福岡大を経て1994年に広島へ入団し主にDFとして広島で3年間、京都で1年間プレーしJ1・21試合に出場。広島時代はマンチェスター・ユナイテッドへの短期留学も経験する。そして1998年には当時四国リーグ所属だった愛媛へ里帰り。愛媛FCでサッカースクールコーチを務めつつ2001~2003年には選手兼監督・2004年には監督専任で4年間JFLでも采配を振るった。その後は2年間の愛媛ユース監督経験を経て、現在は愛媛県立松山北高コーチ、スカパー!愛媛中継解説者として活躍中。日本サッカー協会公認A級ライセンス保持。当サイト連載「大西貴の親子でサッカーを楽しもう!」でも、熱弁をふるっている。
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取材・写真・文/寺下 友徳