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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
グローブがなく素手でGKを務めた息子。Bチームは面倒見てもらえないのか問題
公開:2020年5月20日 更新:2020年6月11日
人数が増えてチーム分けをしたところ、Aチームは試合で優勝するのに息子が入ったBチームは大差で負けるのもざらで、最近は下を向いて走るように。2チーム同時で試合になった時は、キーパーグローブはAチームの子だけがつけて、Bチームでキーパーを任された息子は素手で試合に......。
コーチに「Bチームの子たちにも指導してほしい」と言ったけど、「親の機嫌はとらない。指導は全体を優先する」との答え。サッカーを楽しんでプレーしてもらいたいから、移籍も視野に入れるべき? とのご相談をいただきました。皆さんならどうしますか?
今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにお母さんへ3つのアドバイスを送りますので参考にしてください。(文:島沢優子)
<<献身的で頑張り屋だけど覇気がない息子をどうすればいいか問題
<サッカーママからのご相談>
長男(9歳)が少年団でサッカーをしています。 楽しくサッカーしてましたが、人数が増えて試合によってはAチームBチームに分けて出場するようになりました。
チーム分けがなかった時は勝負所で先発してましたが、AチームBチームで分けられるとき息子はBチームです。 親的にはどちらでもいいし 「やる場所でベストを尽くそう、楽しくやろう」と言ってきました。
ですが、 チームメンバーは固定で入れ替わりもなく、少し前の試合でもAチームは優勝してBチームは最下位。10-0で負けるのもざらという状況が続き、息子が下を向いて走るようになりました。
さすがに可哀想になりコーチに『チームは固定ですか? Bチームの子どもたちにも足りない部分を教えてあげて下さい』と伝えたのですが、『個人差があるし先をみてください。親の機嫌はとりません。個人も見ますがチーム全体を優先します』という返事でした。
その後も状況は変わらず息子は下を向いて走ってます。少し前の試合ではAチームとBチームで同時進行の試合になり、一つしかないキーパーグローブはAチームの子が身につけ、Bチームでキーパーを務めた息子は素手でした。前なら他チームに借りたりしてたのですが......。
チーム編成も実力はみな息子と似たり寄ったりのレベルに見えるのですが、このままだとサッカーを楽しめなくなってしまいそうです。
息子には「辞めてもいいよ、移籍してもいいよ」と伝えています。
どうしたものか悩んでいます。アドバイスをいただけませんでしょうか。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談いただき、ありがとうございます。
いただいたメールの文章だけでは詳しいことがわからないため、こちらの想像の域でお話しします。そのことを踏まえたうえで参考にしてみてください。
結論から言うと、現時点で移籍する必要はないと思います。
■チーム編成は改善した方がいいけれど、コーチの「先を見て」は間違いでもない
その理由は、息子さん自ら「チームを替わりたい」とお母さんに相談に来ている形跡がないからです。
9歳ということは、小学4年生。もしかしたら3年生でしょうか。コーチの方がおっしゃった「個人差があるし、先を見てください」というのは間違ってはいません。
とはいえ、気になるのは、Aチームが優勝でBチームが最下位という点です。Bチームがかなりの大差で負けることもあるようです。ということは、チーム内でかなり実力差がある。それは、おそらくチームの底上げができていないからでしょう。
大会や試合によって、同じ実力で2チーム編成したり「今日は名前の五十音順でチームを作ろう」などと実力に関係なく分けるチームは増えているようです。その点からすると、もう少しコーチの方に勉強してほしいとは思います。
ただし、このチーム全体の「底上げ」は、指導者にとっても悩みどころです。少なくない数の方が「力の差が大きくて」と話します。それも、3~4年生の中学年くらいの担当者から聴くことが多いです。
なぜなら、低学年ならまだそんなに試合も多くないし、ボールを追うのが楽しいばかりで、高学年になると体格や運動能力の差が縮まってきて、力が平たんになっていきます。一番デコボコが目立つのが、中学年という息子さんの年齢グループなのです。
しかも、息子さんのチームは急に人数が増えてきた、と書かれています。上手な子、少しまだ遅れている子など、人数が多ければおいほど濃淡ははっきりしてきます。
したがって「先を見る」姿勢は、保護者にとっても重要な時期なのです。
■お子さんがサッカーを楽しめないのは「チームのせい」だけなのか
そこで、お母さんに三つアドバイスします。
ひとつめは、「かわいそう」という感情を自分の中でコントロールしてください。
「さすがに可哀想になりコーチに『チームは固定ですか? Bチームの子どもたちにも足りない部分を教えてあげて下さい』と伝えた」と書かれていますね。このあたり、お母さんのかわいそうに感じる気持ちはわかるのですが、親のわが子に対する「かわいそう」という感情が子どもにプラスの成長をもたらすことはほぼ皆無です。
例えば「0-10で大敗してしまう」このことが「かわいそうだなあ」と一瞬感じるでしょう。血を分けた親ですから、子どもの身の上に起きたネガティブな出来事に対してそう感じてしまうのは仕方がありません。でも、力の差があるのだから、大差がつくのは仕方がないこと。大人はきちんと受け止めなくてはいけません。
もっといえば、スポーツに勝敗はつきものです。その残酷さを乗り越えて、「1点決めてやるぞ」とサッカーを楽しむ態度が少年サッカーでもっとも必要なものではないでしょうか。
二つめ。
息子さんには、スポーツの残酷さを乗り越えて、「1点決めてやるぞ」とサッカーを楽しむ態度が今のところ見えません。これは、息子さんだけの責任ではないし、指導者にも問題はありそうです。
しかしながら、親御さんも、劣勢な試合状況であろうBチームの試合で「下を向いて走っている」息子さんに対し、同情しただけで終わってしまってはいけないような気がします。
移籍するか、しないか、といった拙速な判断を彼に求める前に、お母さんは「負けているからと言って下を向いて走ってもいいのかな?」とサッカーを楽しむことを求めてみませんか?
サッカーを楽しめないのはチームのせいだ。
お母さんの考えは一理あるかもしれませんが、まずは何か努力や工夫をしてください。親として、今の状況で息子さんが息子さんらしくサッカーに取り組めるようになる道はあるはずです。
いろんなことをして、本人も頑張ってみたけれど、やはりこのチームではやりたくない。息子さんが自らそう言ったら、そこでまた考えればいいことです。
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