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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
チーム内で技術差が大きい、上手い子とそうでない子に分けて練習するべき? レベル差のあるチームの指導を教えて
公開:2023年4月14日
子どもたちの技術に差があって、トレーニングがスムーズにいかない。レベルで分けた方が良いのか、同学年は一緒に練習させた方が良いのか。
というお悩みをいただきました。同じ悩みは多くのチームで聞かれますが、みなさんはどうしていますか。
今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが指導のアドバイスを送ります。
(取材・文 島沢優子)
<<サイドバックの攻撃を活かす攻撃が特徴のチーム、小4に2トップと中盤のポジショニングを教えるのが難しい。どうすればいい?
<お父さんコーチからの質問>
はじめまして。少年団で指導をしています。相談したい年代はU-9です。
チーム内でも技術に差があります。
鳥かごやパス練習でもスムーズにいかない部分があります。
このような場合、うまい子、そうでない子に分けてやるべきですか? それとも同学年同チームであれば混合してやるべきでしょうか?
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
9歳なので3年生でしょうか。練習はスムーズにいかないからこそやるものです。練習がうまくいくのであれば、その練習はする必要はないとも考えられませんか。うまくいくことがいいわけではありません。
■子どもには「さまざまな環境」が必要
小学生年代の練習の運び方として「М―T―М(マッチ・トレーニング・マッチ)」を日本サッカー協会が推奨しているのはご存知かと思います。練習の最初に試合(ミニゲーム)をやって、手をつけたほうが良さそうな課題を抽出してそれを練習する。そして、そこを意識しながら、最後に再び試合をします。
この場合、試合でこのあたりがうまくいかなかったけど、どうする? と子どもたちと相談しながら練習を進めます。その際に「じゃあ今日はこんなメンバーでやろうか」と、技術が進んでいる子どもとそうでない子に分けてやってもらうことがあってもいいでしょう。その逆で、どちらの層も混ざって行うこともある。さまざまな環境を用意してあげましょう。
この「さまざまな環境」が子どもには必要です。エコロジカルアプローチ「運動学習理論」(※)をご存知ですか。指導者が環境設定することで、子どもは自分で学んでゆくと言われています。この考え方を参考にする指導者がいま増えています
※参考:『エコロジカル・アプローチ「教える」と「学ぶ」の価値観が劇的に変わる新しい運動学習の理論と実践』 植田文也 ・著
■安易に技術の優劣で分けるのではなく、チームスポーツであることを意識させる環境づくりを
つまり指導者の役割は、環境の設定なのです。例えば何かを行う人数グループ分けも、練習の「環境」に入ります。4人でやるほうがいいのか、2人なのかといった設定を、簡単ではなく、かといって凄く難しいものではなく、全員が楽しみながらトライできるものにしてください。最初からできてしまうのであれば、それはトライにならないのでそこの見極めが必要です。
「グループ分けはこうしたほうがいい」というものはありません。上手い子とそうでない子が混ざると、例えばこんなことが起きます。
上手い子がわがままになります。自分より技術が劣る子にボールを預けるとミスすることが増えるので、周囲の状況を見ずに、仲間にパスもせず、自分で勝手にドリブルしてしまいます。
だからといって安易に技術の優劣で分けて練習するのではなく、そこで「サッカーはチームスポーツだよね? どうやってみんなで点を取るか考えるスポーツだよね」といったことを伝える機会にもなります。
そういう部分を育ててあげてください。
■小さいころに技術習得に時間を割きすぎると、大きくなってから認知や判断の時間にもっと時間がかかる
過去にも申し上げたように、日本は止める、蹴るといった足元の技術指導から入ります。そうではなく、サッカーの入り口に立つ子どもたちには、サッカーの認知や判断する力を養うための環境を設定することが必要です。欧州などとは育て方が逆なのです。
小さいころに技術が大事だからとそこに時間を割き過ぎてしまうと、少しずつ体が大きくなってフルパワーで蹴ると、ボールのコントロールが難しくなります。学年が上にいくと、小さいときは上手かったのに試合に出られなくなるなど、漏れてくる中学生や高校生が出てきます。認知や判断する力をつける練習をもっと増やさなくてはいけません。
欧州では、大きくなってパワーがでてくるときに、もう一度技術をやり直します。コーチはひとり一人見てあげています。ところが、日本の中高生は、部活動やクラブで「勝つか負けるか」が最優先になる環境にいます。そのチームの戦術に当てはまる子どもは試合に出られますが、そこから外れると使ってもらえません。プロになったり日本代表になる選手の中に、Jクラブのユースに上がれなかった例は少なくありませんが、上記のような背景があるのです。
■インサイドキック一つ取ってみても、一人ひとり有効な蹴り方が違う
また、技術差があるのが悩みのようですが、これも先ほどお伝えした運動学習理論に基づくと、以下のことが言えます。
同じことを繰り返す反復練習が技術の習得に役立つと、長い間言われてきました。たとえそうだとしても、子どもたち一人ひとり有効な蹴り方は違ってきます。なぜなら骨格や筋肉の付き方や質も違うからです。
例えば、同じインサイドキックを蹴るにしても、使う筋肉は変わるためひとり一人に合ったように動かすことを学んだほうが良い。要するに「はい、みんなこうやろう」といった全員一緒にやっても効果は期待できません。全員一斉指導は通用しないのです。
例えば、手の上におぼんを乗せて、いっぱいいっぱいに水の入ったコップを移動させるとします。おぼんを目の高さに持ってくるとき、へその高さに持ってくるとき、左右に平行に移動させるとき。たったそれだけの動きでも、何百もの筋肉や神経が動いています。そして、人ぞれぞれで使っている神経や筋肉、肩関節の可動域も異なります。
前述したように、集団指導は限界があります。であれば、指導者の皆さんはどう解決なさいますか?
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