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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
チームで一番上手いから? 息子が努力しないんですけど問題
公開:2019年11月 6日
上手くなりたいと言うからスクールの回数も増やしたのに、やる気が見えない息子にやきもきしている。お金を払っているんだから頑張れと言うのは親のエゴだとわかっているけど、合宿やスクール代など、経済的にも負担が大きい。
親としては「上手くなくても、一生懸命になれるものを見つけてほしい」と思っているが、「自分はみんなより上手いから大丈夫」「選抜合宿は当たり前で行ける」という考えや、苦手な練習は失敗するとごまかすところも本気度が見えずイライラする。どうしたら意識を変えられる? とのご相談をいただきました。
今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。(文:島沢優子)
<<息子が極端にミスを恐れるのは厳しいコーチである私のせいなのか問題
<サッカーママからのご相談>
こんにちは。いつもとても参考にさせていただいています。
小3の長男についてです。
サッカーを始めて3年経ちます。本人からやりたいと言い始め、地元のサッカーチームでは無く、いわゆる「お稽古」のサッカーをしています。初めは週1でしたが、半年前には「もっと上手くなりたい」と本人が言い出し、今は週2で通っています。
が、親から見て、最近本人のサッカーへの意欲とやる気が見えなく、イライラ、ヤキモキしています。
もともと、学校から帰ってくると疲れもあり、そこまで進んで外に行くほどタイプではなかったのですが、それでも以前は自分からサッカーボールを持ち練習をしたり、時には友達と野球をしたり外に出ていました。
夏休みになると、暑さのせいなのか夕方父親や私に促されたりしないと、外に出なくなりました。また、集合住宅住まいなので、すぐに公園に出られる環境ではないからか......とも考えましたが、同じ建物の他の子たちはそれでも外に出ているので、環境の問題でもないと思います。
ひどいときは、練習の日以外は1週間ボールを触らないことも多いです。
それでも、もともとの運動神経の良さもあってか、チームの中では1番上手く、サッカースクールのグループの県代表に選ばれたりしています。そのため、本人の中での焦りはないのだと思います。
「上手くなくても、一生懸命になれるものを見つけてほしい」と私達夫婦は思っています。
しかし、毎シーズンの合宿、選抜合宿、毎月のスクール代、正直かなり負担でもあります。「お金をこれだけ払っているんだから、頑張りなさい」というのは、親のエゴだとは思いますが、「練習2日行ってるから大丈夫」「自分はみんなより上手いから大丈夫」「合宿は当たり前で行ける」という考えが、親からみて、イライラとやきもきしています。
その都度、なぜ合宿に行きたいのか、どうしてサッカーを続けたいのか聞いています。小3で、そこまで意識をさせるのは難しいでしょうか?
本人は「サッカーは楽しいから続けたい。辞めたくない」と言っています。確かに、スクールの日は楽しくやっています。ただ、苦手な練習(リフティングなど)は失敗するとごまかして、言われた回数を頑張らず、終わらせたりする態度もみられます。そこにも親から見て、本気度はみられません...。
このまま続けさせることは、正しいのかが分かりません......。どうしたら、意識を変えることができるのでしょうか。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談、ありがとうございます。
ご相談文を読ませていただいて、「なんとまあ、子どもらしい男の子だなあ」と微笑ましく思いました。「苦手なリフティングを失敗すると数をごまかして、言われた回数をしない」といったことが書かれていますが、まだ9歳の子どもですよね? よくあることではありませんか。
「こらっ! ごまかすのはよくないよ!」と怖い顔して睨んでおけばよいのです。それだけで「本気度がみられない」となってしまうのは、要求レベルが少しばかり高すぎやしませんか?
結論を申し上げると、お母さん、もっと肩の力を抜きましょう。全体的に、すべての思考が「過度」です。
前述したように、まずは、息子さんに期待するサッカーへの意欲の大きさを計る目が「高過ぎ」ます。9歳が自主練をしないくらいでやる気がないと「決めつけ過ぎ」です。そしてそのことに「深刻になり過ぎ」だと感じます。
■熱中の度合いを親の物差しで計らないこと
ご相談の文章だけなので正確ではないかもしれませんが、今のお子さんはサッカーでお腹いっぱいなのかもしれません。お母さんが書かれているように、毎シーズンの合宿に選抜チームの合宿、そして週2回のスクールがある。この分量で「楽しいから続けたい」と言うのであれば、「そっかー、サッカー楽しいんだねえ。良かったね」と好きなことに出会えたことを喜んであげましょう。
「上手くなくても、一生懸命になれるものを見つけてほしい」と私達夫婦は思っています、と書かれています。とても立派な子育ての価値観だと思います。ただ、一生懸命かどうかを大人がジャッジするのはやめませんか? お子さんの「一生懸命」を、もう少し信じてあげましょう。
例えば、お母さん(お父さん)は、おそらく家族のために懸命に食事をつくっていると思います。でも、それを「本当に一生懸命に作っているの? 苦手なものは作ろうとしないよね?本気度が感じられないんだけど」と仮に(あくまで仮にです)お姑さんから言われたら、どうですか?
いや、あなたに何がわかるの? と思いますよね。私だったら、腹が立ちます。
それと同じことだとまでは言いません。が、熱中する度合いを親の物差しで計ってしまい「そんなので一生懸命って言えるの?」などと伝えてしまうと、子どもは「何をやっても、もっと頑張れって言われる」と、自分が認められていないことに打ちのめされます。これでは、彼の「自分はこれでいい」という自己肯定感の構築を阻害します。
■まだ9歳、焦りやもっと上達したいという感情を上達の動機付けにしなくて良い
「上手くなくても、一生懸命になれるもの」と思うのなら、一生懸命への道を見守ってあげてください。子どもが熱中して努力する姿を見ていれば、親は安心できるかもしれません。したがって、親が「なんでも一生懸命に」と言い続けると、それを忖度して好きでもないのに頑張る子どもがいます。それを重ねていったことで、自分の好きなもの、本当にやりたいことがわからなった、という若者は実は少なくありません。
その点で、私は、息子さんは非常に子どもらしくていいなあと感じたのです。
「意欲を大人が勝手にジャッジしない」
これがひとつめのアドバイスだとすると、二つ目は「好きだという気持ちを育てましょう」です。
なぜなら、お母さんは息子さんが「チームで一番上手いから焦りがない」とおっしゃっています。ということは、サッカーが上達するには「自分は周りより下手だからもっとうまくなろう」といったコンプレックスやネガティブな感情が必要。そのように考えているとも言えます。
「もっと追いつきたい」
「もっと高いレベルでやりたい。それには今のままではダメだ」
こういった負の感情が、人を育てることもあります。しかしながら、9歳がサッカーを上手くなる一番の動機付けにするのは、まったくヘルシーではありません。お母さんたちが期待する「負けるもんか」という負の感情は、2番目より下の動機付けで十分です。
では、何を一番の動機付けにするのか。
それは「サッカーって楽しいなあ」という感覚です。今のところ、それは十分育っています。本人が「楽しいからやめたくない」と言うのですから。
そのようにすこぶる健全に育っているのに、お母さんはスクール代が負担だからと、なぜ合宿に行きたいのか、どうしてサッカーを続けたいのか尋ねています。
経済的に苦しくて生活していけないのならば、息子さんに理由を話して週に一度にしてもらうとか、費用のかからない少年団にしてもらえばいいと思います。子どもは親が思っている以上にやさしいです。
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