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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

試合に出られず意欲ナシ。負けずに頑張れと励ますのは正しいか問題

公開:2020年3月19日 更新:2020年6月11日

キーワード:やる気セレクションモチベーション安全基地.小児心理脳外科自己肯定感認知能力負のスパイラル

ある日を境にやる気を無くした息子。練習も参加してるだけ、試合も言われるから走っているだけ......。「辞めたい」と言いながらもなんとなくサッカーを続けているけれど、いまでは下の学年の子にポジションを取られてしまう始末。

もう一度やる気を出して頑張ってもらいたい、楽しんでサッカーしてもらいたいというお母さんからのご相談です。皆さんならどうしますか。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとに3つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)

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(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

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<サッカーママからのご相談>

ウチの5年生の息子は、上に2人の兄がいるので、サッカーを始めたのも早く、低学年のうちはやる気もあり、上の学年に帯同するほどうまかったのですが、ある日を境にやる気を無くしてしまい、辞めたいと言いながらもサッカーを続けています。

やる気をなくしたキッカケは、2年生の時の、試合に帯同に選ばれるセレクションです。その日は体調が悪かったせいもあり、思うように動けずセレクションは終了。結果やはり選ばれず、初の挫折を味わいました。

そこから、やる気を無くしてしまい、練習も参加してるだけ、試合も言われるから走ってるだけ、楽しんでるようには見えません。

チームも1人辞め2人辞めと、今では7人しかいなくなり、8人制の試合なので下の学年の上手い子達を帯同せざるを得ないのですが、その子達にもポジションを取られてしまう始末です。

「負けずに頑張れ」と言うと「別に」と返してきますが、試合で思うようにプレー出来なかったら「辞めたい」と言います。

本当に辞めさせた方がいいのか、判断がつかなくてご相談いたしました。

春から最高学年になるし、試合に出れない訳でもないので続けてますが、もう一度やる気を出して頑張ってもらいたい、楽しんでサッカーしてもらいたいのです。

親としてどうやってサポートしてやれば良いのでしょうか?

 

<島沢さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

ご相談文を読んで、お母さんはきっと思慮深い方なのだろうと感じました。なぜかというと、所属するチームの指導者に対するクレームだったり、批判的な言葉がないからです。お子さんの心の動きや態度だけに対し、言及なさっています。

お母さんにしていただきたいことが三つあります。

 

■お子さんがやる気を失った理由をいま一度考えてみよう

まず最初に、お子さんが「なぜやる気をなくしたか」を考えてみましょう。

小学2年生までは「上の学年に帯同するほどうまかった」とあります。ところが「帯同に選ばれるセレクションに落ちて以来、やる気を失った」とあります。

ということは、いま5年生(4月から6年生)の息子さんは、すでに3年近くもやる気がないままサッカーをしていることになります。「(コーチに)言われるから走っているだけで、楽しんでいない」と書かれています。

文章だけで実態は把握できませんが、これが事実であれば、お子さんにとってサッカーは苦行でしかありません。楽しくて仕方ないから、自分から積極的に取り組むのが本来の姿なのに。

まだ2年生という低学年の段階で、上の学年にたった一度帯同できなかっただけでやる気をなくす――そうなった理由は何でしょうか?

推測でしかありませんが、息子さんにとってサッカーの価値は「試合に出て活躍する」といった結果を出すことでしかとらえられないのではないでしょうか。評価されない楽しくないだからやる気も出ない というふうに、負のスパイラルに陥っているように見えます。

これは、周りの大人の責任です。

小学2年生の段階でセレクションをしたり、決まった子どもしか試合に出さない。そのような実力主義を、まだ認知能力が未熟なこの年代に施してしまうと、簡単にバーンアウトします。

よく言われるように、小学生の間はサッカーを好きになることが一番重要な時期です。寝ても覚めてもサッカー、雨で練習や試合がお休みになったら機嫌が悪くなるほどサッカーが好き。そんな気持ちを6年間で育てることが最優先されなくてはいけません。それなのに、そこが育まれていない。それが、彼がやる気をなくした原因だと思われます。

 

■息子さんは結果でしか周りの大人に認められないと感じているのでは

チームの指導の仕方に問題はありそうです。が、厳しい言い方かもしれませんが、お母さんも一度じっくりご自分の言動を振り返ってみませんか。

ご相談文をよく読むと、息子さんについて「昔はうまかったのに」とがっかりしている様子がうかがえます。落ちたセレクションについても、「体調が悪かったせい」とお母さん自身が受け止め切れていないように映ります。

さらには「その子達(下級生)にもポジションを取られてしまう始末」と息子さんを責めるような表現です。不服があるのだろうなと思わずにいられません。お母さんがこのような思いでいることは、おそらく息子さんに伝わっていることでしょう。

したがって、もし息子さんにサッカーに前向きに取り組んでほしいと思われているのならば、そのような息子さんへの負の感情をまずはご自分で処理することが重要です。これがふたつめです。

家庭は子どもにとって安全基地でなくてはいけません。子どもはどんな試練があっても、自宅に帰り「ただいま」と言えば、親御さんが笑顔で迎えてくれる。「サッカー楽しかった? 楽しかったらそれでいいんだよ。君が笑顔で元気であればOKだよ」と受け止めてくれる。そのような環境でこそ「自分は今のままで大丈夫」という自己肯定感が育まれます。これは小児心理や脳科学の現場でもよく言われていることです。

この自己肯定感のベースがあれば、うまくプレーできなくても「今度は頑張ろう」「もっと練習して上手くなろう」と切り替えられます。

ところが、今の息子さんは、少しでも出来が悪いと「サッカー辞めたい」と口に出てしまいます。これは、活躍したか、しなかったか、という結果でしか周りの大人に認められないと本人が感じているからだと私は思います。

 

 

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文:島沢優子

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