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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

Jクラブで仲間に見下される息子に自信を取り戻してほしい問題

公開:2021年7月21日

キーワード:JクラブJリーグ育成組織ジュニアユースセレクションチームメイトレギュラー自信回復補欠高学年

Jクラブの育成組織に所属する息子。何度も悔しい思いをしてようやく周りと同じ土俵に立てたと思っていたけど、常に二軍で試合に出られず、チームメイトからも見下されている。

自信をなくしプレーの成長も見られないし、このまま続けてもジュニアユースに上がれそうにないので親の自分が辛いし悔しくて、ダメ出ししたり口うるさくしてしまう。このまま続けさせていい? 息子の自信を取り戻すにはどうしたら? というお悩みをいただきました。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに3つのアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

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(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<出場機会がない息子。友達といたいから移籍したくない問題

 

<サッカーママからのご相談>

初めましてこんにちは。

チーム及び息子のチームメイトについての悩みを相談させてください。

息子は5年生で現在、Jクラブの育成組織で活動しています。4年時のセレクションで合格し活動を始めました。そこに至るまでに何度となく悔しい思いをしてようやく、周りと同じ土俵に立てたと思っていました。

しかし、ここ最近試合に出れずベンチスタートばかりです。スピードがない、体が小さい、ウエイトがない、などを理由に常に二軍でチームメイトからも見下されています。

試合に出ても辛そうな自信のないプレーばかりで、得意だったドリブルもしなくなりました。萎縮してパスも弱い、チームメイトの言いなりでここ1年半いい所がなくなってしまいました。自分で考えてプレーしても見下されチームメイトに文句を言われ、やりたいプレーもさせてもらえていません。1年半前から成長が見られなくなってしまいました。

練習風景は見れないので分かりませんが、みんな、上の学年に選ばれるためにやる、選ばれたやつが上手くて偉いという感じになっています。

本人はこのまま続けたいと言っていますが、この先続けてもジュニアユースには上がれそうにないと私が思ってしまい、辛くもなり、悔しくもなり練習をもっとやらせたくなったり、口うるさくダメ出しや出来ないことを言ってしまいます。

プレーしているのは親ではなく子どもという事は頭では理解していても、どうしても現実を目の当たりにすると、悔しさが込み上げてきてしまいます。

このまま、続けることに意味はあるのでしょうか? バカにされて見下され、自信をなくし自分の思うプレーができない息子に、どのような声かけをしたらいいのか......。自信を取り戻して練習や試合に挑めるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。

アドバイスを頂けると嬉しく思います。 よろしくお願い致します。

 

 

<島沢さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

JクラブのU‐12チームでプレーされているとのこと。この年代の中である意味最も高いレベルでプレーしているので、お母さんが期待していることが相談文でみてとれます。

 

■このままだと子どもがつぶれる

短いメール文からすべてを理解するのは難しいのですが、ひとつだけ断言できることがあります。

少し厳しい言い方になりますが、お母さんがこのままだと間違いなく息子さんはつぶれてしまうと思います。それはサッカー選手としてだけでなく、人としても、です。できることなら、今の接し方や態度、そして息子さんのサッカーに対するお母さんの考え方を変えてほしいと願います。

どんな言葉を投げつけているか、お子さんがどんな表情でお母さんの言葉を聞いているか、容易に想像がつきます。なぜなら、多くの取材でそんな親子をたくさん見てきたからです。

 

■自分のネガティブな部分を客観視できているのは救い

一方で、もうひとつ断言できることがあります。

「お母さんは十分やり直しができますよ」ということです。なぜなら、この相談で、ご自分の状況を正直に報告されているからです。

子育てのやり直しがなかなかできない親御さんは、他者に自分の状況を伝えるとき、ご自分のネガティブな部分やありようを隠そうとします。きれいな言葉や観念的な言葉で形容しがちです。

ご相談文にこうあります。

「本人はこのまま続けたいと言っていますが、この先続けてもジュニアユースには上がれそうにないと私が思ってしまい、辛くもなり、悔しくもなり練習をもっとやらせたくなったり、口うるさくダメ出しや出来ないことを言ってしまいます」

お母さんはご自分の態度や言葉を心から後悔されているようです。プレーしているのは親ではなく子どもであること。それを頭で理解していても、悔しさが込み上げてしまう。そのように、ご自分を客観的にみることが「まだ」できています。

こうやって客観視できている今、どうか一日も早く子育てを転換しませんか?

 

■親の押し付けになっていないか、いま一度気持ちを整理しよう

そこで、お母さんに三つのアドバイスをさせてください。

ひとつめ。

まず、息子さんのサッカーをご自分がなぜ応援しているのか? ここを正直にご自分に問い直してみましょう。

以下のどれが、お母さんの気持ちに一番近いですか?

1.プロになってほしいから何が何でも頑張ってほしい
2.結果を出して、サッカーで人生を切り開いてほしい
3.サッカーを楽しみながら、いろいろなことを学んで、人生の糧にしてほしい

もし、1か2であれば、お母さんの「こうなってほしい」という希望は、子どもからすれば親の押し付けです。したがって、少しずつ、お母さんがサッカーを応援する理由を3に近づけてください。

私がなぜそんなことをお母さんに要求するのか。それは、ごくごく一部を除いてサッカーの場合、親御さんがわが子に対し1や2の気持ちが強い家庭は子どもの成長を止めてしまうからです。

自主練をさせたり、試合のビデオを観てダメ出ししたり、厳しい言葉で子どもを鼓舞するご家庭は非常に多いです。親御さんはそうすることを親としてのサポートだと勘違いしています。お母さんも似たことをなさっていると思います。

ただ、お母さんは、自分がそうしてしまうことを、現時点ですでに後悔しています。いいプレーができなかったり、試合に出られない息子さんを、ご自身が情けなく感じたり、歯がゆく感じて腹を立てている。息子さんに当たっているだけだということを理解しています。

ぜひ、今一度「サッカーを楽しみながら、いろいろなことを学んで、人生の糧にする」という目的を親子で確認してください。そしてこれまでの怒ったりしてきたことを、できれば謝りましょう。それだけでも、息子さんは気が楽になるはずです。

 

■今のうちに子離れしないと、後々子どもの心が壊れる可能性がある

ふたつめは、子離れすること。今のお母さんは、息子さんのサッカーに依存しているように映ります。親が乗っかれば、小さな体とこころはじきに壊れてしまいます。チームでサッカーを続けたいというなら、続けさせてあげてください。

さまざまな岐路を親が命令し決めてしまうと、子どもはその先うまくいかないことがあると「お母さんがやめろって言ったじゃん」と必ず言います。やさしくて言わない子もいますが、大きくなったらトラウマのように蘇ります。

小さいときに世話を焼き過ぎたことがすべからくうまくいかず、大人になったわが子に「僕の人生を返せ!」と泣かれたり、暴力をふるわれた親御さんを私は取材で何人も会ってきました。

まるで脅しているようで嫌な気持ちになるかもしれませんが、今ならやり直しできます。

  

次ページ:子どもにどんな声掛けをしたらいいか

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文:島沢優子

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