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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

強豪クラブで試合に出られなくなった息子にどう接すればいいのか問題

公開:2022年7月13日 更新:2022年10月17日

キーワード:クラブチーム.小5スタメンスピードフィジカルベンチスタート移籍負けず嫌い

セレクションを受けて入った強豪チーム。幼稚園からサッカーをしていて技術はあるけど高学年になって体格やスピードなど、周りに圧倒され自信がないプレーが目立つ。

前はスタメンだったけど今はベンチスタートかどうかの瀬戸際。もともと負けず嫌いだから這い上がってほしいけど、親としてどう接すればいい? というご相談をいただきました。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの知見をもとに、サッカーをするわが子をどうサポートすればいいのかアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

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(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

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<サッカーママからのご相談>

はじめまして。

5年生になったばかりの息子は3人兄弟の真ん中です。幼稚園からサッカーをやり始め、2年生の時にセレクションを受けて3年生からチーム活動をしています。

街クラブの中でも強豪なので、練習試合などでも強い相手と試合したり、公式戦などでも優勝を争うようなチームです。

幼い頃からサッカーが好きでボールを触っていたので技術はあると思いますが、高学年になり体格、スピードなど周りに圧倒されているのか、自信がないプレーが目立つようになりました。

加えてメンタルも弱くなり親としてどう見守るべきか悩んでいます。

スタメンとして起用していただく事ばかりでしたが今ではベンチスタートかどうかの瀬戸際で、それでも本人はここのチームでやっていきたいとの事でした。

負けず嫌いだった子なのでここから這い上がってほしいと思うばかりですが、親の在り方として私自身がどう接すればいいか自信がないので助言してほしいです。

よろしくお願いします。

 

 

<島沢さんからの回答>

ご相談ありがとうございます。

とても強いクラブで先発でプレーしてきた息子さんを誇らしく思う気持ちが、お母さんのメールから伝わってきます。それなのに高学年になって、試合に出られなくなった。この変化に、親子ともども戸惑っているようです。

助言してほしいとのことなので、私から2つアドバイスさせてください。

 

■わが子が「這い上がる」ために親ができることはない

ひとつめ。

何もしなくていい。何も考えなくていいのです。この段階で、お母さんのおっしゃるように「這い上がる」ためにやってあげられることは特にありません。

ひとつあるとすれば、いつも通り淡々と接することです。万が一、いつも淡々と接することなく、世話を焼いたり、子どもに「うるさいな」と嫌がられるような言動があるのだとしたら、即刻やめたほうがいいでしょう。

 

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■親の心配が子どもにとっては重荷になることも

小学5年生は「前思春期」と呼ばれ、第二次性徴を迎える思春期の前段階です。自我が芽生え、自分が周りや親からどう思われているのか、どう評価されているのかに注目するようになります。

そんな時期に、自分を心配しているお母さんの存在は、息子さんにとって重荷になりかねません。

「自信のないプレーが目立つよ」
「メンタルも弱くなってるよ」
「ママは這い上がって欲しいんだよ」

そういった言葉を出さずとも、お母さんのパッションを子どもはそばで痛いほど感じるものです。

 

■試合に出られない、周りに抜かれるという焦燥感を覆せるのは「サッカーへの愛情」

小さい時は他の子どもより秀でていたのが、高学年になり周囲が体格やスピードで追いついてきた。サッカーの理解度や視野や判断スピードなど、もうひとつ上のフェーズになってきたということでしょう。そのことを、時間をかけて理解していくのは息子さん自身です。

いってしまえば、お子さんのピンチを救うのは親ではありません。彼を救うのは、いま目の前にいるお母さんではなく、これまでの子育てのありようです。

試合に出られない、みんなに抜かれていく――

そんな焦燥感や劣等感を彼が覆せるとしたら、それはサッカーへの愛情です。小さい時からやってきたサッカーがいかに好きかどうか。サッカーを好きな気持ちがあれば「今は試合に出られないけれど頑張ろう」とか「練習だけでも楽しいし、ま、いっか」と思えるはずです。

そう思える子は、親御さんが「楽しくできればいいよ」という少年スポーツで最も大切な価値観を伝えています。

 

■出られない→移籍 を繰り返す親子もいる

ところが、そう思えない子どももいます。試合に出られなくなると、他の強豪チームへ移籍します。そこでも出られないと、また違うチームへ移ります。

そのようなジプシー生活をするお子さんはどの地域にもいるようです。その場合、親御さんが試合に出ることでしか評価していなかったり、やらせたいと思うポジションで出場させてくれるクラブを求めて移籍し続けます。

レギュラーじゃないとダメ。できれば背番号10。1試合1ゴール等々。さまざまな約束事が、親子の間にあったりします。大会で優勝すること、地域トレセンに選ばれることに軸足を置いている場合もあります。

 

■今こそ、少年スポーツの原点に立ち戻ろう

わが子がレギュラーから降ろされた、試合に出られなくなったという相談は多いです。

その場合、皆さんがおっしゃるのは「何をすればいいか」「どうすれば子どもが乗り越えられるか?」ということを聞いてこられます。さあ何をやってあげようか? と意欲満々な親御さんたちを「まずは見守りましょう」と説得する第一段階こそが非常に骨が折れます。

多くの方が、小さい時からお子さんの自主練習に付き合ったり、一緒にサッカーの試合を見るなどしてきたことで子どもさんが上手くなったと感じておられます。つまり成功体験があるので、今回も救ってあげたい、リードしてあげたいと躍起になるわけです。

しかしながら、そんなふうにお母さんは考えていないようです。「親としてどう見守るべきか」と書かれているように、すでに見守りモードになっています。悩みの半分は解決しているではありませんか。

今こそ、少年スポーツの原点に立ち戻りましょう。息子さんに「楽しくできればいいよ」と笑顔で言ってあげてください。試合や練習から戻ってきたら「楽しかった?」と聞けばいいのです。

試合に出ない姿を見てストレスがたまるくらいなら行かなければいいのです。

 

次ページ:子どもの人生を楽しく実りあるものにするために、親はどうするか

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文:島沢優子

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