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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
練習中なのに砂遊びに行ってしまう。トレーニングに集中できない未就学児を一緒にサッカーさせるにはどうしたらいい?
公開:2022年7月17日 更新:2022年10月17日
まだ集中力がない未就学児。サッカーは好きみたいだけど、練習中にふらっと砂場に行っちゃう子をどうすればいい? というご相談をいただきました。
未就学児の指導は、話を聞けるようになる年代より自由な子が多く大変なことも多いもの。同じような経験を持つコーチもいるのでは?
今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、6歳以下の指導で大事なことをアドバイスします。
(取材・文 島沢優子)
<<手詰まりになるとサイドにパスする子どもたち。サイド=スペースがあって安全、ではなく「安全な場所」は状況によって違うと教える方法は?
<お父さんコーチからのご質問>
池上さんに相談していいことなのか悩んだのですが、投稿します。
現在U-6以下のクラスに関わっているのですが、どうしても、練習中に砂遊びをしてしまう子がいるのです。
サッカーが嫌いというわけではないようで、毎回楽しそうにクラスに通っていますし、周りのお友達とも仲良くやっているのですが、練習中にフッと砂場の方に向かってしまいます。
まだまだ集中力のない年代なのは理解しているのですが、他の子たちはちゃんと練習に取り組んでいます。
どうすればその子も一緒に楽しくサッカーできるでしょうか。
池上さんはこんな時どうしていましたか? また、この年代の指導で大事にしていることは何か教えていただけませんでしょうか。
<池上さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
6歳以下という年代は、指導者が「サッカーを教えなくては」と力む必要はまったくありません。すべてにわたって「どうしたら楽しくなるか?」を大人が考えてほしいと考えます。
■砂遊びでなく、バッタなどに興味を持つ子どもたちも
拙書『叱らず、問いかける』に書かせていただいた話をしましょう。
幼児にサッカーを教えているコーチの方が、ほとほと困った様子でこんなことを相談してきました。「幼稚園の子は夏になると、バッタばかり追いかけているんですよ。わざと、ピッチの外側の草むらにボールを蹴り込むんです」
草むらにボールがころころと転がると、バッタがいっせいに跳びはねます。それを見て、4~5歳の子どもたちはみんなで笑い転げる。そして、それが楽しくてたまらないので、みんな草むらにボールを蹴りに行ってしまうそうです。
困り果てるコーチには申し訳ないのですが、子どもは確かにボールを蹴っていることに気づいてほしいと思いました。場所がサッカーコートではなく草むらなだけです。私が「私ならわざと草むらにボールを蹴り込みますよ」と話すと、コーチの方は驚いたような顔でした。
ボールが転がってバッタが跳ねれば、子どもは楽しくて何度も何度も蹴ります。楽しくて練習になっているのです。バッタを捕まえ、ボールを蹴って、子どもたちはすごく楽しい。
何の問題もありません。
■砂遊びしたくなるのは当然の年代 サッカーボールを使わない遊びで、身体を動かす楽しさを伝えるのも良い
砂遊びがしたくなるのは当然の年代です。子どもたちがそちらに心を奪われているのならば、「よし、今日は砂遊びにするか!」とみんなでやってもいいでしょう。
なぜなら、サッカーだけでなく様々な形で体を動かしたほうがいいし、いろんな経験を積んだほうがいい年代なのです。
サッカー遊びだけでなく、砂遊びをしたり、バッタを捕まえたり。バルシューレと呼ばれるボールを使った遊びでもいいでしょう。サッカーボールを使わない遊びはたくさんあります。
それらを通して、体を動かしている楽しさを伝えてください。その際に、すべて競争がある、勝ち負けを楽しめるゲーム形式にするとよいでしょう。
幼児や低学年を教えるコーチの皆さんにはそういうことも勉強してほしいです。
■「今日は何をしたい?」と子どもたちに選ばせよう
もうひとつ、私が大事にしていることは、子どもたちに問いかけることです。
「じゃあ、みんな今日は何をしたい?」と尋ねてみましょう。コーチから一方的に「今日はこれをやるよ」ではなく、彼らに選ばせるのです。例えば、砂遊びを少しだけやったら、「今度はボールを使って何かやってみようか。何がいいかな?」と聞いてあげます。
先日、親子サッカーキャンプをしました。子どもはサッカーを織り込んで、親御さんたちには私から座学で子どもが楽しく学ぶための環境とはどういうものかを伝えます。
サッカーの練習は最初にシュートゲームというメニューを行いました。最初は地面に置いたボールを蹴るのですが、次の段階で「試合中は止まった状態では蹴らないよね?」と子どもたちに問いかけます。ドリブルしながらシュートなど、動きながら蹴ることを「みんなで考えてください」と言って考えてもらいます。
■一例を見せるとそれしかやらない、思考しない子どもたち
ところが、日本の子どもたちは「ドリブルしながらシュートとか」と一例を見せると、今度はそれしかやりません。パスを出してもらってシュートするといったほかのことをなかなか考えようとしない傾向があります。したがって、手を変え品を変え質問していきます。
例えば、フットサルコートに置かれているゴールの前に、同じサイズのゴールを置き、間にはサッカーボールが入るくらいの隙間をつけて2台を前後に並べます。
その状態で「さあ、後ろのゴールに入れてごらん」と言って始めます。そうすると、2台のゴールの前から、ボールをふわりと浮かして入れようとする子、斜めから隙間を通して狙う子などいろいろ出てきます。カーブをかける子もいます。
そのように、考えたり、選べたりできる環境を整えてあげると、子どもたちは楽しそうにチャレンジします。
なかには「こんなの簡単!できたよ」と意気揚々と報告してくる子がいます。「おお、どんなふうに入れた?」と言えば、やって見せてくれます。そこで、また注文を出します。
「じゃあ、次は違うやりかたでやってみてくれる?」
すると、子どもはまた考え始めるのです。このように、大人は次々と問いかけ続けることが大切です。
■サッカーも遊びの一つ。6歳以下の子どもたちは「遊ぶ意欲」を削がないことが重要
遊びのメニューも、サッカーの練習メニューも、ネットで調べたり本を読めば、そこらじゅうに転がっています。そして、説明通りにやる必要はありません。
広さや距離、ボールやゴールの数など、コーチの皆さんが自分で考えて、その都度変えていくことです。正解はないので、変えることを怖がらずトライしてみましょう。
一回やって、子どもたちが乗ってこなければ、やめればいいのです。
大事なのは、練習を楽しくするためにはどうするか? を大人が考え続けること。子どもにそれを問いかけ続けること。この二つの視点を、この年代では大切にしてください。
なぜならば、6歳以下の子どもたちの育成は、「子どもの遊ぶ意欲」を削がないことが重要だからです。サッカーも遊びです。「真面目に練習しろ」とか「きちんとやれ」といった規律のようなものはこの年代ではそこまで重要視することではありません。
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