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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
攻守の切り替えをどう教える? 身体の向き、その時何を見ればいいのか、子どもたちに理解させる方法を教えて
公開:2022年12月16日 更新:2022年12月19日
3、4年生に攻守の切り替えを教えるときのポイントは? 身体の向きや、ボールを奪った後(奪われた後)何を見ればいいのか、どのぐらいの距離感で守備をすればいいのか。
この年代で理解しておくべきこと、そして理解させるための方法を教えて。とのご相談をいただきました。
今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、元日本代表監督イビチャ・オシムさんのトレーニングなど具体的な練習方法をアドバイスします。
(取材・文 島沢優子)
<<ドリブル=一人で突っ込む、独りよがりと認識する保護者が多い。ドリブルもスキルを高めるのはダメなのか。いいメニューがあれば教えて
<お父さんコーチからの質問>
こんにちは。
子どもたちが所属するスポ少でボランティアコーチをしています。今教えているのは3、4年生の学年ミックスチームです。2学年ごと、レベルごとに2チーム構成にしているためです。
強くも弱くもない、よくあるチームレベルでみんな楽しくサッカーしています。
ご相談したいのは、攻守の切り替えで何に注意すべきか、身体の向きはどうすればいいかなどをどう理解させればいいのか。ということです。
ボールを奪うチャンスとはどんな時なのか、どのぐらいの距離感を持って守備していればいいのか、奪った後は何を見ればいい(何が視野に入るようにすればいい)か、などこの年代で理解しておくべきことを教えてください。
よろしくお願いいたします。
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
言葉で伝えてしまうと、結果的に教え込むことにもなってしまうので気をつけたいものです。
■日本の子どもは教えられた通りのやり方だけをする
例えば、ある場面でボールを受けるときの体の向きを伝えるとします。「ここではこっち向きで」などと皆さん教えると思いますが、それは子どもひとり一人の特性に合っているかどうかはわかりません。
しかも、大人が教えてしまうと、日本の子どもはその通りにやりがちです。そこで「ああ、でも、僕はこっちのほうがターンしやすいんですけど」といった本人が実際に感じたことを指導者に伝え、そこを尊重しながら一緒に考えられると良いのですが、なかなかそういったやり取りは起きません。
従って、子どもにすぐに答えを言うのではなく、それができるような練習をすることが肝要です。そもそも、そんな練習を考え出すのが指導者の一番の役割です。
■プレーの選択肢を増やすことで、自然と適切な向きで受けられるようになる
体の向きで言うと、私が今やっているのは、ゴールラインにゴールがある状態で、タッチラインの真ん中、つまりセンターライン際の左右にもゴールをそれぞれ置きます。ダイヤモンド型にゴールが4つある状態です。そこでミニゲームをしてもらいます。互いに相手ゴール以外にタッチライン上にある左右のゴールにも入れていいことにします。
要するに、ともに3つのゴールへ攻撃できるわけです。
例えば、左サイドでゴールラインにあるゴールに向かってボールを受けようとしています。ところが、右タッチラインのゴール前にはディフェンスが誰もおらず、スペースがある。その近くにフリーの味方もいる。であれば、ボールをもらったときにどこを向いたほうがいいのか? を考えなくてはいけません。そのようにプレーの選択肢が増えれば、自然に適切な向きで受けられるようになりますし、チャンスを察知するために視野も広くなります。
そのように練習をオーガナイズしておけば、子どもたちは見るところが多くなります。早く見つけ出せればゴールに直結するので攻守の切り替えが早くなります。そういったトレーニングを遊び感覚でやればいいと私は考えます。
コーチがプレーの流れを止めて体の向きはこうだよと説明しなくても、遊びの中で体得できます。そうやってゲームを楽しませてください。
■視野を広げ、良い位置にいる味方を見つけるトレーニング
もうひとつは、オシムさんのトレーニングにもあるメニューです。普通にゴールは2つにして5対5をします。2つ決まりがあります。
1.どちらのゴールにシュートしてもよい。
2.ただし、シュートにいくためには、センターサークルにいるフリーマンに一度預けなくてはいけない。
フリーマンに預けた瞬間に、どちらのゴールに攻めるのかを5人が意思統一を図らなくてはなりません。その際、フリーマンはどこで誰が最もアタックに適した位置にいるのかを見極めなくてはなりません。
よって、フリーマンをキーパーにしておくと、キーパーの攻撃的センスが育ちますし、中盤の選手にやってもらうと360度視野を広げるのに役立ちます。
中学生や高校生にはよく行う練習ですが、小学生にやってもらうときはハーフコートにするなど、グリッドを小さくするといいでしょう。
■切り替えについて言いすぎると、子どもたちが攻撃をしなくなる場合もある
前述した二つのトレーニングは守備から攻撃への切り替えだけでなく、守備への切り替えも速くなります。こうやって練習で体得させれば、選手は自発的に攻守の切り替えをするようになります。コーチが「切り替えろ」と喉をからして命じるよりもずっと効果的です。
コーチの皆さんは攻守の切り替えを素早くしたほうがいいことは理解しています。ではそのために練習でどうするかを考え、自分で試行錯誤することも大事なことです。しかし、皆さん早く答えが欲しいようです。そこは子どもと同じなのかなと感じます。
さらに、ひとつ気をつけなくてはいけないのが、あまりに切り替えについて言い過ぎると、子どもたちが攻撃しなくなる場合もあります。守備のことを考え、攻撃に迫力が無くなったりします。そうならないよう、チャンスと思ったら全員で攻撃に出る。守備に戻るときも全員で戻る。そこにこだわったトレーニングを行いましょう。
次ページ:シュートしたら終わり、ではなくボールを奪われた後の動きを設定した練習を
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