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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
コーチが否定してばかりのせいか自信を無くす息子。移籍したほうがいいのか問題
公開:2020年4月 8日 更新:2020年6月11日
セレクションがうまくいかなくて落ち込んでいた息子に「自分のレベルがわかっただろう」と笑いながら言ってくるコーチ。普段から褒めてくれることがなく、ダメ出しばかりのコーチの声かけで息子はどんどん自信を失っていく。
このチームで続けることは子どもにとって良いこと? 親が気にしすぎ? とのご相談です。皆さんならどんな決断をしますか?
今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを送りますので参考にしてください。(文:島沢優子)
<<試合に出られず意欲ナシ。負けずに頑張れと励ますのは正しいか問題
<サッカーママからのご相談>
4月から2年生になる息子の通うサッカースクールのコーチについてご相談です。
コーチから子どもへの声かけが気になっています。ほぼ毎回練習終わりに「もっと頑張らないとダメだ」など息子へのダメ出しを親の前でします。
区大会があり息子のチームが優勝したときもほぼ褒める事はなく、「そんなので満足してたらダメだ」と言われました。
息子がセレクションを受けてうまくいかなくて落ち込んでる事も知っているうえで「自分のレベルがわかっただろう。チームで少しできるからって調子にのってたらお山の大将だぞ、上手い子はたくさんいるからな」などの言葉を笑いながら言ってきます。
もっと頑張ってほしいという気持ちなのかも知れませんが、親の立場からすると聞いていて気分がいいものではありません。頑張ってほしいのなら、もっと頑張りをほめたりポジティブな言葉をかけるのが指導者なのではないでしょうか。
コーチが褒めてくれる事はほとんどないので、練習後のダメ出しが一層強調されるような印象です。その声かけで息子がどんどん自信を無くしていくような気がしています。
このチームで続けることが息子にとっていい事なのか悩んでいるのですが、私の気にしすぎなんでしょうか?
何かアドバイスなどあればお願いします。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
サッカーの指導者に限らず、今の大人たちは子どもを褒めるのが下手です。息子さんのコーチのように、「悪いところを正す」のがスポーツのコーチングや教育、子育ての目的だととらえていらっしゃる方が多いようです。
■コーチが親の前で発破をかける理由
加えて、コーチの方が「チームで少しできるからって調子にのってたらお山の大将だ」と発言していることを考えると、お子さんはチーム内でも上手な選手なのだろうと察します。
であれば、その方は「もっと伸ばしたい。上手くなってほしい」と指導者が抱きやすいある種の強い欲望をもって指導していると考えられます。そうなると、冒頭で述べた「悪いところを正そうとする」意識が他の子ども以上に強く働いてしまう。
そのため、毎回練習終わりに「もっと頑張らないとダメだ」などと息子さんへのダメ出しをする。わざわざかどうかはわかりませんが、親の前でそのように発破をかけるのは、親御さんにも同様に言ってほしいからなのかもしれません。
いずれにしても、肯定せずに否定ばかりしてしまうコーチの方はほとんどの場合、ご自分もそのようにして育てられていますし、指導者になってからもそのやり方で子どもに接してきたのでしょう。
よって、お母さんの子育て観とはそもそも異質なわけです。
「頑張ってほしいのなら、もっと頑張りをほめたりポジティブな言葉をかけるのが指導者なのではないでしょうか」
お母さんのその考えは私も賛成です。そのように指導や子育てを「褒めて育てる」考え方は、令和の今はすでに主流になりつつあります。
しかしながら、物事の道理が変革される際、必ず大きなハレーションが起きます。
「いや、褒めるだけでうまくなんかなるもんか。子どもは厳しく育てなきゃダメだろう!」と。
コーチの方は、まだそんなふうに自分の意識を変えられずにいるか、もしくはそのように変わっていること自体に気づかないかのどちらかでしょう。
■コーチの意識変革には時間がかかる、ここは親の方から発信を
そこで、本論です。
コーチにあれこれ言ってもおそらく無駄です。お母さんひとりの力でそのコーチに長年刷り込まれてきた価値観を変えることは難しいでしょう。
ではどうするか。
息子さんはまだ7歳。これから新2年生になるということは低学年のカテゴリーです。まずは、ここで以下の価値観を親のほうからどんどん発信していってください。
「お母さんは、あなたがサッカーを楽しんでいればそれでいい」
「試合の結果や、練習や試合での出来、不出来はまったく問題にしない」
ふたつめは、息子さんがネガティブなコーチングによって本当に自信を無くしているのかを聞いてみてください。
「コーチに言われることが気になって自信を無くしちゃう? チームでサッカーをするのが楽しくないかな?」
もし、そうだと答えれば、「じゃあ、チームを変わってもいいかもしれないね。ダメだというばかりのチームではないところを一緒に探してみる?」と提案してみてください。
しかしながら、すでに1年間過ごした仲間と離れがたい気持ちもあるでしょう。お子さんが「チームを変わるのはなあ......」と迷っているようなら、じゃあ、もう少しここでやってみようかと時間を置きます。
子どもの育ちには「恒常性」が実は重要です。
いつもの場所、いつもの仲間、いつものコーチ。
大人が思うほど環境の変化を好んではいません。ただ、相反する言い方ですが、自分が心地良い環境であれば新しいところもすぐに慣れてしまう順応性もあります。
どちらも、子どもの姿です。
ただし、どちらの姿になりたいかを選ぶのは子どもです。誘導せず、ゆっくりと考えさせてあげて下さい。
あくまでも私の意見ですが、一番いいのは、息子さんが「コーチ、僕だって頑張ってるんだから、いいことをしたときは褒めてよ。あまりけなさないでよ」と自分で言えることです。
無論、なかなか難しいことです。
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