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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

クラブで理不尽に扱われた長男をやめさせる際に次男も一緒に退団。後悔してます問題

公開:2022年12月 7日

キーワード:いない子扱いきょうだいチームの中心兄妹兄弟姉妹姉弟指導者理不尽な扱い監督移籍退団

全選手の名前が書かれているはずの冊子に長男の名前だけない、練習の紅白戦でも一人だけ出場できないなど理不尽な扱いを受け退団。

チームの中心で仲間に慕われ、退団は嫌だという次男も一緒に辞めさせたが、「みんなとまた会える?」と聞かれると何も言えなくて......。

いない子扱いの長男への対応が限界だったけど、次男はチームに残すべきだった? とのご相談をいただきました。

スポーツと教育のジャーナリストであり、男女のサッカー選手を育てた先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの子育てと取材で得た知見をもとにアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

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(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<仲間に見下される息子の自己肯定感が心配です問題

 

<サッカーママからのご相談>

小学4年生と2年生のサッカーママです。

先日2年間お世話になったクラブチームを退団しました。 理由は長男への接し方が悪く カップ戦で配られる全チームの選手の名前が書かれてる冊子で長男の名前だけなかったり、練習の紅白戦で息子だけ試合をさせて貰えないことがあったためです。

そういう事があっても仲間と頑張りたいと決め頑張ってきましたが、とうとう長男からチームを抜けたいと言われ移籍を決めました。

チームを抜けた今、長男は次のステージへの思いでイキイキしてるのですが、問題は次男です。

長男とは違い運動神経が良く、サッカーに関してとてもセンスがあり2年生の中で中心人物で3年生の試合でも存在感を見せてました。なので慕ってくれる仲間も多かったです。

長男が退団するので次男も退団という形になったのですが、嫌だという次男を説得できないまま退団になってしまったので、とても後悔しています。

次男から「またみんなと会える?」と聞かれ、なんと答えていいのか分からず......。次男と仲間との写真を見返しては、次男だけでもチームに残すべきだったのか。と考えるだけでも涙が出てきます。

ですが監督の長男への扱いを見ていると私ももう限界でした。私はどうするべきだったのでしょうか?

 

 

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

選手名簿に長男さんの名前だけがない。彼だけが紅白戦をさせてもらえない。これらが真実であれば、人の道を外れているとしか思えない所業です。なぜ長男さんがこんな目に遭わなければいけなかったのでしょうか。親として、非常につらい時間だったかと思います。

そして、次男君も一緒にやめさせたわけですね。すでに終わったことではありますが、兄弟2人のこころのケアも含め今後について三つアドバイスさせてください。

 

■どちらかを退団・移籍させる場合は、きょうだい間で話し合わせる

お母さんのご家庭のように、兄弟、兄妹など「きょうだい」で一緒にサッカーをするケースは多いです。同じ時期に同じクラブや少年団というように、一緒にやってくれるほうがそれぞれ違うところに所属するよりはサポートする親も楽です。

従って、このように「兄が理不尽な扱いを受けていて辛いので、弟も一緒に退団させたいのですがどう思いますか?」といった相談を受けることは多いです。そうした場合、私は必ず「きょうだいで話し合わせましょう」と伝えます。お母さんもそうしてほしかったです。

指導者の理不尽な扱いに傷ついている上の子の意見や感情と、何も問題なくサッカーをしている下の子のそれらは当然異なります。例えばこの相談のように男の兄弟の場合、「辛いから僕はやめたい」という兄に対し、「いや、僕は楽しいからこのチームに残る」と弟が言うこともあれば、兄と一緒にチームを替える道を選ぶ子もいます。

兄と一緒に退団を選ぶ子は、自分はやめたくないけれど兄のことを考えて渋々の場合もあれば、特に悩むことなく「お兄ちゃんと一緒のクラブがいい」とすんなり決めることもあります。兄のほうも「僕と一緒に他のチームに行こうよ」と弟を誘う場合もあれば「おまえは好きにしろよ。お母さんたちがいいんだったら別々でいいし」と言うこともあります。

弟が渋々のようであれば、保護者は「あなたは好きにしてもいいんだよ。決めるのはあなただよ」と伝えてもらうよう話します。最終的に弟の「内心」がどうであれ、彼が下した決断を親は尊重することが大事ではないでしょうか。

子どもが親と違う人格を持ち、違う人生を生きるように、兄弟も兄と弟は個別の人格です。そこは分けて考えてあげたほうがよかったかもしれません。

ただし、家庭の中で、送迎の手間なども考えて、兄弟違うクラブに行かれるとサポートできないといった理由があるのであれば、そのことを前もってふたりに伝えたうえで話し合ってもらえればいいと思います。

それがひとつめのアドバイスです。次に何か似たようなシチュエーションがあれば、ぜひそうしてほしいと思います。

 

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■「親は何もしてくれなかった」「守ってくれなかった」という思う子も

2つめは、もう少し冷静になれたらよかったかもしれないと思います。お母さんは「監督の長男への扱いを見ていると私ももう限界だった」と書かれています。ここで少し疑問なのが、チーム側に「息子になぜそのような扱いをするのですか?」と理由を尋ねたり、「ひとりだけそのようにされると非常に傷つきます。もっと考えてほしい」と要望したかどうかです。

指導者からの暴言やパワーハラスメントに苦しんだ人の取材もしてきましたが、彼らのなかに「あのとき親は何もしてくれなかった」と述懐する人は少なくありません。どんなに時間が経とうが「守ってくれなかった」という思いは消えないのです。

お母さんの場合、チームを替わる手助けをしているので長男さんが上述したような葛藤を抱えることはないかと思いますが、お母さんが抗議したり、彼らの悔しさ、辛さを代弁する姿を見せたほうが良かったかもしれません(見せたのならOKです)。

 

■兄弟のサッカーに対し、親の熱量に差がないか

三つめは、兄弟に対し同じまなざしでみることです。

お母さんは次男君について「長男とは違い運動神経が良く、サッカーに関してとてもセンスがあり2年生の中で中心人物で3年生の試合でも存在感を見せてました。なので慕ってくれる仲間も多かったです」と非常に記述が多かったです。

それに対し、長男君については何も語られていないのが少し気になりました。次男君への配慮を私に尋ねる相談だったのでそうなったのだと理解しますが、ことサッカーに関してお母さんの熱量に差があると兄弟の関係がぎくしゃくしないとも限らないので気をつけたほうがいいかもしれません。

 

 

次ページ:「兄はこうだけど弟はこうだね」と自分の物差しで評価していないか振り返ろう

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文:島沢優子

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