ほんの少しポイントを押さえるだけで足がグングン速くなる――。
走りにはそんなポイントが幾つかあります。
その最たるものが「走る時の姿勢に気をつけること」です。そこに気をつけるだけで、速く走れるようになるのです。
200メートルハードルアジア最高記録・日本記録保持者であり、現在はプロスプリントコーチとして活躍する秋本真吾さんにタイムを縮める走る姿勢について教えていただきました
前編で『運動会の徒競走で速く走れるコツ』、後編で『サッカーで相手に競り負けないために誰よりも速くスタートダッシュする方法』と、2回にわけてお届けします。(取材・文/杜乃伍真 写真/サカイク編集部)
まずは、秋本さんが実演してくれた日本人の小学生によくあるダメな走り方を見てみましょう。
つぎに、正しい走り方を見てみましょう。
この2つの走り方、どこが違ったかわかりますか? 秋本さんに教えてもらいましょう。
■走りで一番大切なのは"姿勢"
「一番大事なのは姿勢ですね」
走りを知り尽くす秋本さんがまず指摘したのは「姿勢」です。
「最近の子どもたちは自分では良い姿勢だと思っている姿勢が、実際は悪い姿勢だということがあります。みんなに"気をつけ"の姿勢をしてもらうと、横から見たときに、あごが前へ出ていて、背中が丸まっているんです。おそらく、普段勉強するときやゲームをするときの悪い姿勢を、そのまま走るときの姿勢に持ち込んでしまっているんです」
姿勢が悪いと、なぜ足が遅くなるのでしょう。
「たとえば、子どもに『速く走る方法を知っている人?』と聞くと、みんなが『腕を振って走る』とか『足を高く上げて走る』などと答えてくれるのですが、背中が丸まったままの悪い姿勢で走ろうとすると、足を高く上げようとしても胸の辺りで足がつっかえてしまって、足を高く上げることができないのです。そうすると足を上げたときに生じる地面へのパワーが伝わらないので、当然、足も速くはならないのです。空き缶を踏みつぶすときに高く足を上げて、勢いよく踏み潰したほうが力が入るのと同じですね」
では、秋本さんが普段、子どもの悪い姿勢を良くするために行っているポイントとは、どのようなものなのでしょうか。
「子どもたちには順を追って教えていくのですが、まずは『①正しい姿勢で座ること』、次に『➁そのままの姿勢を維持しながらしっかり立つこと』、そして『➂その姿勢を崩さないように歩いて徐々に走ってもらう』という手順になります」
① 正しい姿勢で座る
→両足つま先の間でにぎりこぶし2個分ほど開ける
→あたまの上から一本の串が刺さっているようなイメージを持ちその串が折れないように座る
「姿勢の悪い子どもの場合、座ったときにかかとが地面についたり、前に手がついたりしてしまいます。お相撲の"そんきょ"の姿勢をイメージするといいと思います。かかとは地面にはつきません」
➁ ①の姿勢でしっかりと立つ
→頭から刺さっている串が折れないようなイメージを持って立つ
→このときに肩が前へ出て猫背になっている姿勢を直すために両手を後ろに伸ばしてひっぱる
→胸が前へ出たら両手を横に戻して両足を閉じてまっすぐに立てば、正しい姿勢の出来上がり
➂ ➁の姿勢を崩さないように歩いて、徐々に走る
→頭から刺さっている串が折れないように意識しながらゆっくりと歩く
→慣れてきたらゆっくりと走ってみる
「この時点で、行進をしているように綺麗な姿勢で歩けているのがわかると思います。見た目の印象もかなり変わります。トップアスリートは姿勢がとにかく綺麗です。腕の振りがたとえバラバラでも、頭から串が刺さっているようなイメージを持ちながら走って、身体の軸がぶれていなければ、それだけでもかなり速く走れるようになります」
<$MTInclude module="足が速くなるメルマガ登録フォーム" parent="1"$>
取材・文/杜乃伍真 写真/サカイク編集部